第6話

購入注意 ⑥
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2021/06/03 08:53






       ★



今日は、新しい振り付けの打ち合わせだった。



シンメのカレは、オレが認めるダンスの天才だ。

みんながカレをエモいって言うとおり、腕や身体の動きがほんとにきれい。
でも1番特徴的なのは、首から肩にかけて、いわゆるネックラインで、頭を斜め前に倒して視線を寄越す表現が、何とも色っぽい。
そして足さばきが華麗。



練習中は集中してたから、問題はなかった。
終わってから、汗の処理して、シャツを着替えて。
帰り、水分補給しながら、問題点を話し合う。

んだけど、どうしても言いたくなった。


「なあ」


「なんですか?」


「アイツに変なこと教えんの、やめてくれる?」


にたり、って笑うから、元凶はコイツだって確信した。


「えー、何のことだろ?
僕なんか言ったっけ、覚え、ないなぁ」


「言っただろ!
ゴムだの、外出しだの!」


「声大きいですよ」


いけね、つい興奮した。
あわてて、声をひそめる。


「そおゆうことは、もう言わないでくれる?
オレら、ちゃんと仲良くやってんだから、余計なことでケンカしたくないんだよっ」


じっとオレを見てから、しれっと、


「たかが外出しされたぐらいで怒るなんてサイテー。
かっわいそーなキラキラ」


「なっ?
……なんでわかんの?」


んべって舌を出された。






      ★ ★



かたや、ボーカルラインのふたり。



ダンスの遅れでグループの足を引っ張らないように、今日もふたりで練習していた。

ちょうど近くにある、安い貸しスタジオ。
1時間千円。

始めと終わりに、丁寧なストレッチを欠かさない。
屈伸や、前屈、後屈、ふたりで協力して筋を伸ばしていく。

何気なくこの前の話題に触れた。


「ところで、あれ、どした?
うまくいったんか?」


「あー、うまくいったんだけど、怒られちゃって」


「え、なんで?」


「勝手に離れんなって。
終わってもそのままくっついてたいんだって」


「えー?
処理してからまたくっつけばいいやんなぁ?」


脚を開いて身体を横に倒して脇をゆっくり伸ばす。


「わがままやなぁ?
こっちは汚すの申し訳ないって思てんのに、なぁ?」


「片時も離れたくないって言われちゃ、しょうがないでしょ」


「えー、そんなかわええ事言うんや?
こっちは、何も言わず急に機嫌悪うなるから、ご機嫌取るの大変や」


「どうやってご機嫌取るの?」


「まあ、だいたいなんか食べさすか、あとはキスやな。
最近、キスすると機嫌が直るってわかってん」


「俺はー、どうしてんだろ?
あんま怒られた事ないかも。
だから余計この前はビックリしちゃって」


ふたりで目を合わせて笑う。


「ボクら、苦労すんなぁ」


「お互い、惚れた弱味ですねっ」


妙な連帯が生まれていた。





       ★ ★ ★


この「購入注意」シリーズは、読者様の感想文を元に書きました。
4人を愛して、ステキなインスピレーションをくださって、本当に感謝しています。

感想文は読者様のサイトで公開されておりますので、よろしければ是非ご覧になってください。
とっても楽しくてオススメです。


   Special Thanks to みるてぃ様





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