第5話

購入注意 ⑤
99
2021/05/13 20:02





ここんとこ忙しかったから、久しぶりのふたりきり。
明日は午後からトークの収録だけだから、今夜は……できる!


もう考えただけでワクワクしちゃうな。

いつも、おあずけくらった犬みたいに、美味しいのわかってる大好きなゴハンが目の前にあるの、匂いかぐだけで我慢してんだもんなぁ。

そう思うとオレってケナゲじゃん?

今日はできるだけずっとくっついてられるんだあ。



いつも通りの楽しい時間。
ガマンして、ガマンして、でもやっぱり爆ぜちゃって。
だけど、アイツが終わらないから、快感はまだまだ続く。
終わっても、力を失うまではずっと挿れててくれるから、静かに凪いでく余韻もいいんだ。

気持ち良くて、気持ち良くて、何度も名前を呼んじゃうよ?


なのに!

うっとりしてたのに!

なんで急に抜いて離れるんだよ?!

オレ、なんかあったのかって、ホントにビックリして、一気に覚めた。

急に冷水浴びせられるって感覚、ホントにあるんだな。


「どうした!?」


自分でも声が尖るのがわかる。

見るとオマエは、出したのをティッシュで受けてた。
ヘラッと笑って


「うまくできた」


って、語尾にハートを付けて言うからカッとする。


「なんで離れるんだよ!」


「え? 
だって、中で出さないように……」


「誰が出すなって言ったんだよ!
そのまま出せよ!
こっちは、オマエが勃ってる間中、ずっと挿れててもらえるの楽しみにしてんのに。
いつもなら、終わってもずっと、離れないでいてくれるじゃん。
なんで離れるんだよ!」


マジ怒り。
楽しみを台無しにされた悲しみで、もっと優しく言うとか全然できない。


「ごめん、俺、負担かけてるかと思って……」


「やだ!
オレ、そんな事言ったことないじゃん!」


オマエはオレの名前を呼んで、抱きしめようとするから、その手を払って背を向ける。


「ごめん、ごめんね?
コンドームもヤダって言うし、負担かけない為にはこうした方が……」


「やだッ!
やだやだやだ!
勝手に離れやがってぇ」


怒ってたら後ろから抱き締めてきた。


「だっておなか痛くなったりさー、俺、俺のせいで大切な人が、体調悪くしたら嫌なんだよ?」


振り向いて顔を見る。


「大丈夫だって言ったじゃん!
誰がそう言うこと言ってんだよ?
オマエは、オレの言葉より他人の言葉を信じんの?」


「だって、メンバーのふたりが……」


ほんとに、誰よりも大好きなヤツらだけど、この時ばかりは、心底殺意が湧いた。


何も知らないコイツに変な知識付けやがって、何が外出しだよ!
人の人生の悦びを奪おうなんて、アイツら許さん!
コイツもコイツだ、何言う事聞いてんだ。


「他のメンバーと、夜の話するの禁止!
今後は絶対ダメ!
オマエはオレだけ見てろ、いいな?!」


「だって。
だって、傷付けてんのかって思って、不安になっちゃ……って……」


オマエの目が赤くなった。

それを見たら、一気に怒りが溶けて、反動でものすごい愛しさが襲ってきた。


たまらず抱き締めてキスをする。


おっきい体して、好きな人は守らなきゃって男らしい性格して、そのくせオレに怒られただけでしょげてんの、可愛すぎる。
長過ぎる手足は、どう見たって子供じゃないのに、心だけ、なんでこんなにピュアなんだろう。


好きだ。
大好きだ。


くっついてひとつになっていられるチャンスを、1秒も失いたくないぐらい。


愛してるんだ。


「……怒ってごめんな?
オレは離れたくないって、わかってくれる?
絶対大丈夫だからさ」


「……うん」


「ダメな時はちゃんと言うから。
だからこれからも、終わっても、できるだけ離れないでよ。
オレ、オマエが大好きなんだ、だから」


返事の代わりに、あらためてキスしてくれた。
オレの下唇を唇で食んで、たまらず開いたところを吸ってくる。
最初の、舌も使えない頃から、ずいぶん上手くなった。

唇を離すと


「俺、もっと相応しい男になるから」


って言うから、


「そのまま変わらないでいて」


って、本心からお願いしてた。







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