浜中兄妹
文「あなたー、出掛けんでー」
『文ちゃん待ってー』
文「何してるん?」
『んー?イヤリングが決まらんのー』
今日は兄の文一くんとお出掛けです。
服買ってくれるんやって♡
文「えー、その大きいのがええかな」
『じゃあ、そうする!』
文「うん、可愛ええ!」
妹のわたしが言うのもなんですが、
文ちゃんはわたしにめちゃくちゃ甘いです。
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文「何買うか決めてるん?」
『んー?ワンピースとかお出掛けの時に着れるのも欲しいし…、仕事のも…』
文「仕事も私服ってほんま悩むよね」
久しぶりに2人で街に繰り出して、色んなお店を巡る。
『あ、これ可愛い!』
文「そんなスカート何処履いてくねん」
『もちろんd…』
文「室に会うための服なんか買わんで」
文ちゃんはずーっとこれ。
龍太くんのことライバル視しとんの。
文「お、これええやん」
文ちゃんが持ってきたのは、
ブルーの花柄ワンピース。
ほんま、センスはいいのよね。
『どう、似合う?』
文「当たり前やん、妹のことは誰よりも分かってんねんで?」
『さっすがー!じゃあこれ!』
いつの間にか文ちゃんはカゴを持ってきて、そのワンピースを入れた。
『カゴ、要らんくない?』
文「え?もっと買うに決まってるやん」
…ほんまいい兄を持ったと思う。
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それから、文ちゃんの着せ替え人形になったかのように、あれやこれや試着させられ、結局5着買って貰った。
文「ええ買い物した♡」
『ありがと、文ちゃん』
わたしの買い物やのに、満足そう。
『文ちゃんは服買わんの?』
文「んー…あんまいらんかな、こないだ横山くんからお下がり貰ったし」
自分のことに関しては、ほんまに物欲無い人。
『あなたも、文ちゃんの服選びたいねんけど』
文「えー?じゃあレッスンで着るTシャツ1枚選んで?」
『1枚ー?』
文「可愛い妹の財布は出したくないもん」
そして、頑として自分の意見は揺るがせない。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!