第22話

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2020/08/02 11:00



電子レンジのなる音と、
電気ケトルの沸騰する音。



龍「あっち!」



そして龍太くんの声。

……え、大丈夫?

バタバタしてるみたいですが。



_



龍「ふぅ!出来たで!」



そんな気配も一切見せず、やりきった感を出しながら龍太くんがご飯を運んできてくれた。



龍「起きれそう?」



気怠い身体を起こそうとすると、
龍太くんがゆっくり背中を支えてくれる。



龍「出来立てで熱いから、ちょっと冷ますな?」



わたしの大好きな鮭雑炊。

それを龍太くんがふーふーして冷まして、
口元まで運んでくれる。



ぱくっ

龍「どう?味濃くない?」

『コクン、』

龍「ご飯に混ぜるだけの雑炊の素があったんよ!俺でも出来たで!」



声が出なくて、上手く返事が出来ないけれど、
龍太くんの優しさがじんわり身体を温めてくれた。



_



何とか雑炊を食べ切って、薬も飲んで、
「寝ときや」と龍太くんは洗い物へ。



上がってくる熱と、倦怠感もあり、
わたしは布団の中に沈んでいく。



けど、直ぐには寝れなくて、

ぼーっと時計の針を眺める。



すると寝室の扉が開いて、龍太くんが戻ってきた。



龍「寝れないん?」

『ん…ても、りゅたくん…かせ、うつる』

龍「俺風邪引かんし、平気よ?知ってるやろ?」



ほら寝なさいと、小さい子を寝かしつけるように布団の上から胸をトントンと叩いて寝かしつけられる。

そのリズムの心地良さに、そっと目を閉じた。



_



side R



あなたが寝付いたのを確認して、
ソファでテレビを見て時間を潰す。



\ピンポーン/

時計を見ると午後3時。
インターホンの画面には文一くんが映る。



龍「文一くん、来たん?」

文《なんでお前が出んねん。あなたは?》

龍「寝てますけど、」



と、玄関先で何やら考える文一くん。



文《真昼間から盛ってんなや》

龍「はぁぁ?!違うって!風邪引いとんの!」

文《は?あなた風邪引いたん?てかはよ開けや、鍵》



お兄さん、とんでもない勘違いしてはったけど、とりあえず部屋に上げる。



文「変な想像さすなや」

龍「勘違いしたんそっちやん!」

文「はいはい」



文一くんはビニール袋をゴソッとテーブルに置く。



文「撮影でめっちゃフルーツ使って、貰ってかえってきた」

龍「うわ、めっちゃあなた喜ぶやん」

文「てか、病院行ったん?」

龍「土曜は午後休診で行ってないんやって」



文一くんは寝室を開けて、寝ているあなたの傍に寄る。



文「飯食えた?薬は?」

龍「13時半過ぎかな?雑炊食べて、薬も飲んだよ」

文「そかそか。熱、しんどそうやな」



そっとあなたの頭を撫でる文一くんは、
やっぱりあなたの兄ちゃんなんやなって思う。




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