龍「あーあー、もう、喧嘩せんといてや!」
『元はと言えば龍太くんが悪いやん、』
龍「そ、それはほんまにごめん」
わたしとじーこの言い合いに、
割って入ってくる、取り合いの張本人。
『じーこ、ほんま意地悪い!』
康「そんなことないですぅー」
『龍太くん何とかしてや』
龍「巻き込まんといてよ」
康「あ、ゲーム続きやろうや」
龍「ちょ、康二も、」
そう言ってまたゲームを付け始めるじーこ。
また龍太くんそっち行ってまうやん…。
『やだ、ゲームだめ』
龍「いやでも、今ええとこなのよ」
『いつ終わるん』
康「ほら、龍太くん早よしてやー」
ほらまた、龍太くんの視線はゲーム。
放置されるのも寂しくて、
龍太くんのお腹に手を回して、背中にくっついた。
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龍「…て、……てや、」
龍太くんの声がする。
龍「あなた、そろそろ起きて?」
『んぅ…いやや、』
龍「俺、めっちゃトイレ行きたいねんけど!」
おっと、それは困った!
抱きついていた手を解くと、
龍太くんは一目散にトイレへ。
さっきまであった背中の温もりが、
急に無くなって寂しい。
外は雨が上がって、夕方になっていた。
康「ずっと寝てたやん」
『龍太くんの背中、寝心地ええねんで?』
康「子どもか」
『じーこに言われたくありませんー』
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結局その後もゲームは続き、
早めの夕食を食べてからじーこは帰っていった。
龍「あなたおいで?」
わたしが洗い物を終えると、
龍太くんは手を広げて待っていた。
ぎゅ、
龍「今日は構ってあげれんくてごめんな」
『ほんまに、寂しかった』
龍「今度の休みは、ちゃんとデートしよ?」
『絶対じーこに連絡せんといてよ』
龍「俺からはせーへんから!」
『じーこから連絡来ても、返信したらあかんよ?』
龍「はいはい」
その日は、龍太くんに構ってもらえなかった分、ぎゅっと抱きしめてくれた。
そして、ふんわりと龍太くんの匂いが、
優しくわたしを包んでくれたのだった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。