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第12話

先生、好きになってもいいですか?
2,320
2022/02/13 01:00
先生、どうして高校生の私のこと
抱きしめてるの……?
どうしてそんなに悲しい声で話すの?

先生の気持ちって……何?
彩香
彩香
……やっぱりダメです……。
誰か来ちゃうから……
私は再び先生の腕の中から
逃げようと体をよじる。
黒月先生
黒月先生
大丈夫。もう授業始まってるから。
教室にも誰もいないよ。
こっちの校舎は特別教室しかないから
……それは、私が一番知ってること。
滅多に人が来ないから、ここで泣いてたんだもん。
黒月先生
黒月先生
……やっと捕まえたんだから。
もう逃がさない
なんで……。
なんでそんなこと言うの……?
心臓のドキドキが速くなって、
苦しい……。
彩香
彩香
……わ、私……高校生なのに――
黒月先生
黒月先生
知ってたんだ。ずっと前から
先生は私の言葉を遮る。

嘘……!?
し、知ってた……!?
えっ!?!?!?!?
ずっと???前から???
ええええええええ!?
彩香
彩香
な、何をですか……?
何って決まってるじゃん!
私のバカ!もう!
黒月先生
黒月先生
知りたい……?
先生は耳元で小さく笑った。
黒月先生
黒月先生
……母さんとの喧嘩、止める時に
おまえ専用対策ノートのこと知ってた。
俺のあげたシャーペン使ってた。
あれ、海外限定品で旅行の記念に買ったやつ。
絶対、偶然じゃないって思った
わあああああああ!
バレバレじゃん……!!!!
恥ずかしい……!!!
黒月先生
黒月先生
かまぼこ入りのポテトサラダ。
おまえから没収したこのノートのことも
目の前に差し出されたのは、
見覚えのあるノート。

あ……。
私のシンデレラノート……。
先生、持っててくれたんだ。
黒月先生
黒月先生
それに、俺との秘密の応援、知ってた。
でもまだ疑ってた
Go!Fight!Thank you!黒月先生!
……言ったかもしんない……!!!!!
バカバカバカー!バカ彩香ー!
彩香
彩香
……もういいじゃないですかッ!?
バレてないって思ってた自分が恥ずかしいよお……!
黒月先生
黒月先生
……確信を得たのは……
も~~~~!
意地悪モードの先生だあ!

恥ずかしくて悶える私の頭に
先生の顔が近付くのがわかった。
先生の吐息が耳にかかる。

きゃああああ!
なになに!?なにー!?
黒月先生
黒月先生
……俺とお揃いの匂い
ひゃあああああああ!!!

ドキドキの悲鳴と驚きは
ほとんど同時だった。

あーーーーーー!!!!!
シャンプー!!!!!
わああああああああ!!!
それは気づかなかったよお!!
黒月先生
黒月先生
……もちろん、お礼の気持ちは本当だ。
でも、かおりさんと花芳が同一人物なのか
確かめたかった……。
あの日、おまえが俺の家で寝てた日。
俺、おまえの本当の姿、見ちゃったからさ
やっぱり……。
あの時、見られてたんだ……。
彩香
彩香
……嘘ついててごめんなさい、先生。
それに、かおりのことも……。
かおりは幻なんです……
謝ったらなんだか悲しい気持ちになってきた。
泣いちゃダメなのに。
今度は笑う番って、女神さまが言ってたのに。
彩香
彩香
悲しませてごめんなさい……。
失恋させちゃいましたよね、私。
最悪ですよね……
ぽろぽろと涙がこぼれてくる。
黒月先生
黒月先生
ばーか
先生はそういって、私を放してくれた。
向き合った先生は、私の涙を拭ってくれる。
黒月先生
黒月先生
人を勝手に失恋した男にするなよ
彩香
彩香
……で、でも……。
……先生はかおりが好きだったんでしょう?
黒月先生は眉を下げて
柔らかい笑顔を私に向けてくれる。
黒月先生
黒月先生
……目の前にいるだろ?今、ここに。
幻なんかじゃない。外見は違うかもしれないけど、
俺と一緒に過ごしたのはおまえだよ、花芳
彩香
彩香
……先生……
私、幻じゃないの……?
私のこの気持ちも消さなくていいの……?
私は私のままでいいの……?

悲しみの冷たい涙は、
喜びのあたたかい涙に変わっていく。

優しい風が私の髪を揺らしていった。
ふわりと立ち上がるシトラスの香り。
女神さまの魔法が、まだ続いている気がした。
彩香
彩香
……私、また一から始めたい。
先生……私、先生を好きになっていいですか?
涙を拭った私は、
きっと先生と出会ってから一番の笑顔だったと思う。

ダメでもいい。
ちゃんと伝えたい、この好きって気持ち。
ありのままの私の、大切な大切な“好き”だから。

先生の笑った涼し気な目も、今はとびきり甘い気がする。
黒月先生
黒月先生
ほら、これ。返すよ
シンデレラノート……。
なんだかもう、随分前のことみたい。

懐かしくなってページをめくってみる。
すると――。
彩香
彩香
……えっ!?
行ってみたい場所は?
――海外の海を見に行きたい。
お気に入りの音楽は?
――クラシック。静かな曲が好き。
嫌いな食べ物は?
――なんでも食べられる。

……嘘。
全部?……全部、答えてくれたの!?

ノートに思いつくだけ書いた1から100の質問。
その全てに先生は答えを書いてくれていた。
彩香
彩香
……これ……!
手が止まったページ。
私の涙の跡が残っているページ。
『好きなタイプは?』
私以外って……書いたのに……。

そこには、『大人の女性。私以外』の文字に×がつけられていた。
そして、書き添えられていたのは――。



『一生懸命、俺を応援して寄り添ってくれるおまえ』
彩香
彩香
……先生……どうして……
黒月先生
黒月先生
言ったはずだ。
『俺はこの人が大切だ。俺の気持ちは変わらない』って。
『どんな人でも受け止めたい』って。
全部、おまえに言ってたんだからな
先生は急に頬を赤くして、目線を逸らす。
黒月先生
黒月先生
……俺が好きなのは、おまえだよ
なんで……。
先生……。私……。全然気づかなくて……。
もう嫌われたって思ってたのに……。
高校生の私なんて、絶対ダメって思ってたのに……。
彩香
彩香
……先生……私……私……
ぽろぽろこぼれる涙はもう止まらなかった。
黒月先生
黒月先生
まったく。もう一人で泣くな。
俺の前でだけ泣けよ
先生……もう、私、ドキドキも
涙も止まらないよ……。
黒月先生
黒月先生
知ってるんだからな。
おまえがここで一人で泣いてたことも
……嘘……!

……そっか。
先生は私のこと、何でも知ってるんだ……。
隠そうとしたってダメなんだ……。
ズルいよ、先生……。
優しくて、カッコよくて、私のこと何でも知ってて、
ピンチの時は助けてくれて、私を笑顔にしてくれる。
世界でたった一人の私の大好きな人。
そんなのズルいに決まってるもん……。

涙を拭う私を、先生は柔らかく抱きしめてくれた。
先生の優しさがいっぱいで、あたたかい。
黒月先生
黒月先生
絶対秘密だからな……彩香
い、今、今今今!
先生、彩香って!彩香って呼んだ!
初めての名前!
もう、私これからどうなっちゃうんだろう……!
黒月先生
黒月先生
ただし、付き合うのは卒業してからな
彩香
彩香
……迎えに来てくれるまで待っています。
ずっとずっと……
あの日。叶わないと思っていた、
先生の腕の中で願った幸せ。

今、私は同じ幸せを叶えた。

これからも、先生のせいで
ドキドキしたり涙を流したりするんだろうな。
子どもだからって言われることもあるかもしれない。
大人にだって、すぐにはなれないってわかってる。

でも、それが全部、私。

私らしく過ごす毎日は、
たとえ辛いことがあったって、
私を磨いて、輝かせてくれるんだ。

シトラスの香水が似合う、大人の女性みたいに。
キラキラと光る秘密の魔法を、私にかけてくれるんだ。







おわり/秘密の恋はシトラスの香り♡

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