真一郎が死んだ。
大人達が話していたのを聞いた。
一虎が真一郎を撲殺したこと、その場に居合わせていた圭介も逮捕されたこと。
万次郎は何も言わず、ただ、
真一郎の棺を見つめていた。
まるで、最初に虎杖が処刑された時の私のようだった。
幼いふたりは泣いてる。
私は、
___________ 真一郎を見た。
ぼそっと呟く。
真一郎に___________、否、呪霊に。
彼は、以前同様そう言って、
消えて行った。
トッ、トッと言う音を出して、
木の床を歩いた。
廊下に出て空気を吸いながら、広い敷地を移動した。
頼んだぞ、じゃない。
私じゃないんだ。
万次郎には、真一郎が必要なんだ。
私じゃない。
虚ろな目の万次郎が、私を見た。
深い黒は、さらに深く、沈んで行っている。
言葉を間違ってしまった。
咄嗟に彼を抱きしめた。
彼は抵抗しなかったが、大きく目を見開いた。
,
万次郎に向かって、
ちゃんとした言葉を喋るのは
これが最初だった。
___________NEXT
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!