[てつや視点]
控え室につくとメイクが始まった。
正直ついたらすぐにあなたさんに会えると
思っていたのでがっかりした。
美人なメイクさんだ。いつもなら嬉しくて
たくさん話しかけるところだがそれどころじゃ
なかった。
どうにかここでアピールできたらいいな…。
扉を開けるとあなたさんがいた。
嬉しくてつい小さめに手を振った。
あなたさんは俺にも虫さんにもりょうにも
バディにも同じように笑顔で会釈をして
挨拶をして席に着いた。
あの日の特別扱いを思い出すとやっぱり
胸のどこかがモヤモヤとした。
あなたさんは手にカメラを持っていた。
みんなで雑談をしていると時間がきた。
インタビューが始まった。
事前にどんな質問をされるかはおおまかに
教えてもらっていた。
おおまかに、だったので全然違う質問もされたが
ちゃんと答えられた、と思う。
あなたさんの顔ばっかり見ていてあんま
覚えてない。
広いテーブルの上で資料に目を通すふりをして
あなたさんの仕草や結んであるポニーテールが
揺れているのを眺めていた。
何度も何度も目があって、
あれ、あなたさん、俺ばっかり撮ってない?
気のせい?
ずっと、集中もせずにあなたさんばっかり
見てたからわかる。
勇気、出すところだよなぁ。
俺は最後の質問にこたえた。
目の前にいるあなたさんのことだよと、
分かるように。
そして今日この後、この服を着てあなたさん
と絶対に楽しいデートをする。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。