第37話

親友の憂鬱
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2019/10/11 08:17
[レイ視点]


私はあなたの親友、会社では片腕のような立ち位置。


あの子は頭もいいしセンスもいい。

だからこそ有名なデザイナーを引き抜いて今の会社を大きくしたり日本にも進出できた。

親友としても片腕としても本当に尊敬している。


そんな親友の様子が最近おかしい。


いつも提出期限の1週間前にはデザイン案もスケジュール調整も書類もだすあなたがギリギリで提出したり、

暗い顔をしていると思えば急に明るくなったり、


こんな姿を見たことはない。

つまりこの子は恋をしていると思った。

この子は恋をしたことがない。

私がそう仕向けた。


純粋で常に誰の目にも届かないものであって欲しかったし、何よりそこらの男にくれてやるような子じゃないと思っていた。


それくらい大切な友達。


そんな友達が私の知らない間に好きな人、もしかしたら彼氏がいるのかもしれないと思うと悲しさを通り越してムカついていた。



レイ「隠してることあるんじゃない?」

あなた「ないよそんなこと。」

レイ「最近様子おかしいよ。」

あなた「レイは私のこと、どれくらい分かる?できるだけ詳しく教えて?」

レイ「あなたは顔も可愛いし性格も良い。猫が好きで、お菓子作りが苦手。仕事のセンスもあるし誰にだって好かれる才能もある。最近音楽の趣味もうまくやってるし。ー……。」

私はなぜこんな質問をされるのかと思いながらも思いつく限りのことを言った。


あなたは笑ってこう言った。

あなた「じゃあ私がお酒とタバコが好きで、HIPHOPが好きで、やきもち妬きで、寂しがりやでなことは知ってる?」

知らない。そんなあなたは知らなかった。

レイ「お酒もタバコも体に悪いよ、寂しいなら私が一緒に……。」

そう言いかけた時、あなたは少し照れた顔をして、

あなた「あのね、出会って2日目で全てを見抜くような人と出会えたの。誰かはまだ言えないけど、お酒とタバコ、誰にも言ったことなかったの。似合わないでしょう?でもね、21歳で責任がたくさんあって、大好きな社員に苦労かけさせたくないと思うと不安で心が潰れそうなこともあるの。そんな時に頼っちゃったんだよ。誰も私が苦しんでる事を知らなかった。愛する家族も、大切なレイも。それに気づいてくれる人ができたの。」


まっすぐと私を見てから続けた。


あなた「この話、誰にも言ってないの。レイにだけ、レイにだから言いたかった。家族以外ではきっと一生、離れ離れになることのない人だから。」


嬉しさと悔しさが混ざって初めての感情になった。

あなたを抱きしめて、気付かなくてごめんね、良かったね、良かった、と言ってしばらく泣いた。



あなたがよく来る私の家には灰皿を置くことにした。

初めて飲んだ日本酒は少しだけ甘くて美味しかった。

悪くないでしょ?と笑うあなたはいつもよりも素敵な笑顔だった。

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