第66話

てつやの部屋②
1,227
2019/12/28 19:12
[あなた視点]


今日はてつやさんのお家でお泊まりだ。

当たり前に散らかったお部屋と変な匂いのするレンジに目眩がする…。

どうしてこうもごちゃごちゃとしているのか。

男の人ばかりだとこうなるものなのか。


私と知り合う前は女の子が出入りしてたみたいだけどその子達は片付けてくれなかったのかな。

サブチャンを見るに片付けられてないみたいだけど…。

まぁ、考えたくないことだから考えないようにしよう…。



てつやさんの本棚を片付けている時にやけに整頓されたところがあることに気がついた。


…女の子、来てるのかな。


もやっとした不安が胸の中を満たした。


聞こえてくる電話。


虫さんを迎えにいくかいかないからしい。

この戸棚と女の子の物探しをしたいので私は行っておいで、と言った。

まずはお風呂場に行った。

何もないし長い髪の毛が落ちてたりもしない。

ベット周辺もなにもなかった。

台所にも凝った調味料があるわけでもない。


最後に戸棚を見た。

ぬいぐるみの後ろに何かある。


…香水の瓶?


ぞわっとした。


見るの怖いな、と思って、取り出して、手のひらにあったのは私と同じ香水だった。




私と同じ香水を使ってる女の子?




確かに人気の香水ではあるけど。




半分くらい使われたその香水を眺めた。




とりあえず今日は見なかったことにして戻そうと思ったら手が滑って床に転がった。





瓶の底には[あなた]と、書かれていた。






見た瞬間に涙がポロポロと出た。





単純な嬉しさと、疑ってしまった罪悪感とが混ざった不思議な感情だった。




あぁ、そういえば東京で飲み会をして私の家に帰ってきた時、いつもとは違う匂いした。

てつやさんの匂いと私の香水が混ざってて気付かなかった。

私もてつやさんの香水買おうかなぁ。

泣いちゃダメだって、いいきかせるけど目が言うことをきかなくて、香水の瓶から目を離せないし勝手にポロポロと涙が落ちた。



ピンク色の香水を手のひらで包んでひとしきり泣いたところで、










ドアの開く音がした。












驚いた顔して駆け寄るてつやさんに私はこう言った。


「大好き。」

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