第64話

風邪
1,040
2019/12/21 20:31
[てつや視点]

風邪を引いた。

撮影を休むレベルの風邪だ。

あなたは忙しくてお見舞いに来れないらしい。


−LINE−

あなた「大丈夫?」

てつや「なんとか。元気の出る言葉が欲しいです。」

あなた「(URL)」





開くととしみつの耳攻めボイスが聞こえてきた。





もうスマホを触る元気のない俺は無心でそれを聞き続けることしかできなかった。




ついにあなたまで俺を雑に扱う時がきたか…。



としみつには悪いが体調がもっと悪くなりそうだ…。

元気な時に聞いたら死ぬほど笑えるのに…。



自分の横にスマホを置いてしまったせいで、サムネの絶妙すぎるイラストが視界の隅に入る。


まぁ、なんだかんだ元気が出ている気がする。















しまった、関連動画でメンバーの耳攻めボイスが次々と流れてくるではないか。

このままではしばゆーのピロートークを聴きながら寝落ちすることになる。







意を決してスマホを持ち上げると、



あなたから何件かラインが来ていた。




あなた「4時間後にはなるけどそっちいけるから耳攻めボイスでも聞いて寂しくないようにしててね!」





そうか、風邪だからとかじゃなくて寂しくないようにだったのか…。



あなたの気持ちを無下にするわけにはいかない、そう思い開くと自分の耳攻めボイスだった。




もう何言ってるのかも分からん。


自分の耳攻めボイthを聞くというシュールな状態にどんどん笑いがこみ上げてきた。


あなたの方が一枚上手だったか…。



眠りについて起きるとあなたがマスクをして俺の顔を見ていた。


あなた「移っちゃうから今日はキスできないね。」

そういって笑うあなたは今日1番の癒しだった。


たまには風邪を引いてみるもんだなと思った。




まだ熱のあるだるい体もあなたが居るだけで少し楽に感じる。


あなた「おじやでも作るね。安静にして待っててね。」


やっぱり少しだけ母っぽいのがずるい。


一人暮らしの俺には優しさが染みるようだ。


冷えピタを張り替えてもらって暖かいご飯を食べて寝るまでそばにいてもらって、次の日には熱は三十七度まで下がっていた。

幸いあなたには移ってなくて、それでもあと1週間は会議でいっぱいだから風邪引けない!っていってキスはしてもらえなかったんだけどね。

せっかくきてくれたけど朝にはもう帰ってしまって寂しかった。

でもたった数時間でもきてくれるのが嬉しかった。

彼女が居るって幸せだな。

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