[あなた視点]
今隣でてつやさんが寝ている。
私はつい仕事に熱中していて時間も忘れていた。
夏であれば空が白む時間かもしれない。
子供のような寝顔はベットライトだけがついた寝室でぼんやりとした光に照らされている。
パサパサしたオレンジ色の髪の毛を撫でると小さく「ん。」とだけ言った。
ヘアオイルを少しだけ手にとって鮮やかなオレンジ色に乗せた。
私のシャンプーを使って、私のオイルを使って、私の枕で寝ている彼は当たり前だけど私と同じ匂いがした。
てつやさんが来てきた服も私の使っている柔軟剤を使って洗った。
明らかに女の子向けの匂い。
少しだけ自分が、無意識にてつやさんの周りの女の子に威嚇しているんじゃないかって思う。
口で「寂しい」「つらい」「もっと会いたい」
「女の子と会わないで」なんて言えない分、これくらいのワガママは許されるんじゃないかっておもってる。
やきもち、なんて可愛いものじゃないと思う。
独占欲といった方がきっとしっくりくる。
でもまだ私のこの弱い部分を見せたくない。
だからすこしだけ匂いだけでも少しの間だけでも独占させてほしい。
今日も隣にいる彼は私の匂いだ。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。