[てつや視点]
あなたのカレーは甘い。
どう考えても俺好みの甘いカレー。
野菜とか肉は一口サイズで食べやすい。
今日のご飯はなに?って電話をしたら今日はカレーだよって言ってた。
今日はなにも約束してないけど撮影が早く終わって明日は編集しかないから遊びに行くことにした。
何もない日でも会いに行きたいって思うのが恋人同士ってもんだ。
そうと決まれば、足早に東京へと向かう。
もう少ししたらこう言うこともなくなるんだろう。
決心してから向かわなくても家が近くなればふらっと寄ったり出来るんだなだって思うとついついニヤニヤしてしまう。
出来るだけ編集を進めて話す時間を増やしたかったから車で向かわず公共交通機関を使った。
「もう家着いてるの?」と聞くと「今日はずっと家で仕事してたよ〜。」と返ってきた。
すぐ会えちゃうなぁって思うとまたニヤニヤしてしまう。
あなたちゃんの家の前について呼び出しのベルを鳴らす。
インターフォン越しに驚く声が聞こえてすぐに解錠された。
早足でエレベーターに乗ってまた急いで部屋に向かった。
あなた「もうやだ!すっぴんなのに、言ってよ〜。」
と嬉しそうな顔をしてるくせに怒ったふりをする。
てつや「カレー食べにきた!」
あなた「あっ…。」
てつや「ん?つくってなかった?」
あなた「うーん、つくったんだけど。食べる?」
あなたが少しだけ慌てた顔をした。
座ってカレーが温まるのを待った。
てつや「まだー?はやくたべたーい!」
あなた「待ってね、今ちょっと甘めにするから。」
???
あなたのカレーはいつも甘いのに。
てつや「いつも美味しいよ?」
あなた「いつもてつやさんが来るときは甘めに作ってるの〜。」
俺のために?いつも辛いの?
あなた「ちょっとどうやってもいつもほど甘くはならないけど牛乳とトマト入れたから少しはマシかなぁ。」
少し困ったように笑うあなたが、なんというか母と少し重なった。
知らず知らずのうちに甘やかされていたんだと思うと嬉しいような恥ずかしいような気持ちになった。
出てきたカレーは色も野菜の切り方も違くて、少し辛かった。
あなた「ほら、言ってくれたら甘くできたのに!」
てつや「いつもこんなに辛いの?」
あなた「私のお家は上の弟以外みんな辛党だからね。カレーは弟がいない時にしか出なかったなぁ。」
てつや「え?あのシスコンも甘党なの?笑」
あなた「…こら、シスコンって言っちゃいけません。笑」
てつや「今度弟が遊びにきたら甘いカレー作ってね。2人で美味しく食べるから。」
あなた「てつやさんだけでも甘いカレー作るよ。
てつや「なんで甘いカレー好きなの知ってるの?」
あなた「お母さんのカレー当てるやつ見たから。お母さんのカレー映った時に停止して野菜の大きさとかも合わせて甘めにしたの。」
俺のこと大好きかよ。
本当に俺の彼女はかわいいな…。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!