[あなた視点]
私は逆に清々しい気持ちで朝を迎えた。
今日、恋かどうかを確認しよう。
てつやさんには今日のインタビューが
終わった後、私の車でどこか行きましょう
と、言ってある。
今日はてつやさんとりょうさんと虫眼鏡さん
へのインタビュー、実はついていかなくても
良かった。
本当は、服のデザインについてやこだわり、
どんな人がメインターゲットなのかという
ことの資料を提出するだけで良かった。
私は彼らの予定の1時間早くということで
連絡していたので早めに向かった。
インタビューと同時にインタビュー中の
写真や、その服を着て撮影もする。
自分や、ずっと新作を手がけたかったと
言ってくれる後輩たちや他社にいたのにも
関わらず設立したばかりの会社に移って
くれた人の夢が形になるシーンだ。
どうせならカメラを持ってみんなに見せようと
思いカメラも持った。
簡単にインタビュー内容や資料の確認も済ませた。
予定時間の15分前に扉が開き、
3人とマネージャーさん?が入ってきた。
気づけば、真っ先にてつやさんを見ていた。
てつやさんは恥ずかしそうに顔を赤くしながら
小さく手を振ってくれた。
こんなこと、色んな子にしているのなら
多分彼は天才だ。
私は悟られないようひとりひとりに軽く会釈を
して挨拶を済ませた。
インタビュー中はカメラマンの方に教えてもらって
一緒に何枚か写真を撮った。
20枚ほど撮った写真の半分はてつやさんで、
しかもどの写真もこっちを見ていた。
雑誌の編集者が最後に問いかけたのは
「どういうシーンでこの洋服を着たいか。」
だった。
そう、この2人のデザインはシャツ。
2人とも体型は違うが形を工夫して似合うように
作られてる。りょうさんのシャツは柄が入ってるので合わせにくいと思いきやタイトなジーンズに合わせるだけでおしゃれに見える。よくわかってくれている。
てつやさんがちらっと私の方を見てこう続けた。
嬉しかった。
言葉はまとまりがなかったがこの服に対して
こんなにも思ってくれているのかとついつい
泣きそうになった。
照れくさそうに笑うてつやさんをりょうさんと
虫眼鏡さんもニヤニヤと笑いながら見ていて
本当に仲がいいんだなって思った。
インタビューが終わり、撮影スタジオに移る時、
先に行ったはずのてつやさんが走ってやってきた。
満面の笑みで走り去っていったてつやさんは
やっぱりなんか子犬のようで微笑ましいと思って
しまった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。