第35話

私の憂鬱
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2019/10/08 11:24
[あなた視点]

今日はてつやさんが遊びにくる日。

楽しみでドキドキで幸せな日なはずなんだけど、


私はいまとてつもなくモヤモヤしてる。


【大激論】妻、彼女のいる人は他の女性と…

って動画をついさっき見てから。


体から血の気が引くような、鳥肌が立つような
気持ちになった。


好きじゃなくても、出来るんだ。


初めてのデートを思い出して抱きしめられて伝わってきた熱を思い出した。

私に向ける笑顔も私に触れた腕も私と出会う前は誰かのもので、私と「こういう関係」になった今も誰かにその熱を伝えてると思うとどうしても今は顔を見たくないって思ってしまった。

服越しにも熱くて伝わってきた動悸は私を好きだと言ってるようにしか思えなかった。

信じてるけど、やっぱりなにも考えたくなくなる。

前日から買い込んだ大量の食材さえもキラキラして見えてたのに今は見たくもない。


心を込めて丁寧に作るはずのご飯も色々考えてたら焦げて少しだけ味が濃くて、散々だった。


お化粧をして、可愛いルームウェアを着て、なんて考えてた自分を馬鹿みたいだとも思った。


でもこんなこと言えばきっと重いと思われるんだろうな。私はもういい大人だから。学生の時みたいなワガママな恋は出来ない。これが私の初恋だとしても。


チャイムが鳴って、ドアを開けると大好きな彼が笑顔で立ってた。


いつもと同じ優しい笑顔で。


その笑顔は私だけが知ってる顔じゃない。

そう思うだけで泣きそうだった。

ついた頃にはもうご飯の時間だったからすぐに
ご飯を出した。

失敗した理由は言えなかった。

ごまかして笑顔でご飯を食べた。




食べ終わって私はまたPCの前に座り仕事を始めた。
ついさっきまで順調だった仕事も手につかない。

なにも言えないまま、時間だけが過ぎて時計の短針は2時を指していた。


てつやさんはその間もソファに横になりながらいつもと同じ優しい目で私を見る。


そんな姿も今は苦しくて見ないふりをした。


数十分が経ってからてつやさんは私の後ろに立って息抜きしたほうがいいよ、何か飲む?何か買ってくるよ。と言った。


私は「そうだね、息抜きするよ。でも特にないかな。冷蔵庫にだいたい入ってるから好きなののんでね。」と言って癖でYouTubeを開いた。


とっさに隠そうとしたけど、その画面は紛れもなくあの動画で、てつやさんは隠そうとしてマウスに手を伸ばす私の手を止めた。


てつや「ごめんね、こんなの見たら傷付くよね。」

てつやさんは静かにスクロールしてコメント欄を私に見せた。


てつや「見て、てつやは誰にも渡したくないと思う人に出会ったことないんだな、だって。今は出会ったから。誰にも触れて欲しくないし今はあなたちゃん以外に触れたくないよ。信じられないかもしれんけど、あなたちゃんと付き合う前にあなたちゃん以外の女の子と2人でご飯とか行っても付き合う前なのにあなたちゃんで頭いっぱいでそんな気にならんかった。俺、多分おれがおもってるよりもちゃんが思ってるよりも本気だよ。」


そういって私を後ろから抱きしめた。


あの時よりも早い鼓動が伝わってきて、ぽろぽろと涙がこぼれた。


いつも見透かされてるような、私が欲しい言葉をくれるこの人を嫌いになれなかった。


1秒単位で好きになる。


声も出せずに涙だけを流す私に慌てながらごめんねごめんねって、何度も言って自分の服の袖で涙を拭いてくれた。



てつや「あなたちゃんの全部が欲しいし、でも大事にしたい。ずっと仕事してたり俺のことで悩んだ時間、無駄じゃなかったって思えるくらい楽しくしたい。だから今日は手出さんし、ただ2人でくっついて色んな話しして寝顔を見ながら頭撫でたりして寝たい。」


あなた「うん、眠たい、もう。」

それだけ言うと少しだけ笑ってじゃあ寝ようって言って2人で寝室に向かった。

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