コンテスト当日。
俺の番が迫って来て、楽屋は何だか緊張感に包まれていた。
あなたさんは綺麗なドレス姿で…。
ホールの真ん中に立ち荒い呼吸を整えながら
いつものように音楽に合わせて踊り出した。
間近でずる賢い顔をするあなたさん
また、違う一面を見れた気がして胸が高鳴った。
俺の緊張をほぐすために話しかけてくれた。
最初はそう思ってたけど、
逆に緊張するような事を平気で言ってくる。
ずるい人だ。
でも、俺はそんなあなたさんが…。
音楽が止まり、楽屋へ戻ると
皆んなのパートナーをしてるあなたさんは
疲れてるはずなのに俺に対して
とびきりの笑顔で話しをしてくれた。
2人がホールの袖で話してる姿を見つめていると…
最後のダンスを終えたあなたさんがホールから戻って来た。
また俺は、人差し指を静かに唇に付けた。
あなたさんの潤んだ瞳が頭から離れなくて
どうにかなっちゃいそうだった。
いや、もう、どうにかなってるのか?
そう言い残し久遠さんは肩を叩いて去って行った。
すると、海司と陸が後ろから
ものすごいスピードで走って来た。
俺は全速力であなたさんの元へ走った。
扉の前に居たあなたさんを突き倒してしまった。
あなたさんが飛びついて来た。
ぎゅっと力を込めて
どこにも逃げないようにハグをした。
静かになったあなたさんの瞳を覗き込み、
唇に、そっと触れた。
END
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。