久遠さんが私の為に学校へ?
現実ではないと思いながらも
その場で待っていた。
すると、横から聞きなれた声がした。
後ろへ転びそうになった。
私の腰を前から両手で支えてくれた。
あまりの顔の近さに鼓動が早くなった。
すると、私の鼓動の高鳴りを察したかのように
ニヤリと笑い顔を近づけて来た。
突然手首を引っ張られ腰を抱かれた。
私の視界からハルが消えて
さっきのハルと同じ近さに
久遠さんの顔が現れた。
ハルは久遠さんに聞こえるか聞こえないかの音量で呟き
立ち去って行った。
けれど、久遠さんの腰を抱く手は離れなかった。
見上げると久遠さんは息を切らして肩を上下にしながら
私を見つめていた。
吐息かかり、心臓が感じたことのない速さで動いている。
そっと腰で感じていた久遠さんの体温が離れた。
…この言葉どこかで聞いたような…。
でも、ハルだし気をつけるも何も無いけどなぁ…。
久遠さんは目を逸らしグッとメガネを押し上げた。
立ち去る後ろ姿を見ていると急に振り返って
口を開いた。
いつもより優しい口調で聞いて来た。
精一杯の声で言うとフッと微笑みこちらへ向かって来た。
トゲのある言葉のはずなのに何処か優しさを感じた。
鏡を向けられた。
強引に手を引かれた。
少し嬉しく思ってしまっている自分がいた。
すると、背後から声が聞こえた。
足が自然と止まった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。