ある日の昼食終わり。これまで全然話してこなかったクラスメイトが、いきなり私に話しかけてきた。しかも、一緒に遊ぼうって。
その子は、クラスの中でも権力が強く、いつも笑っていて楽しそうで、明るい人だった。私とは、まるで反対の人。そんな人にいきなり話しかけられて、思わず変な声を出してしまった。
色んな人が、私に話しかけてくる。いきなり。
疑問を抱えながらも、必死に笑顔を作って小さく頷いた。折角誘ってくれたのに、断ったらきっと嫌われる。いつも暗い奴を誘ってくれたのに、断ることなんて出来ない。
私のことを、気遣ってくれた。それが本当に嬉しくて、涙が出そうになった。それを必死に堪えながら、みんなに合わせよう、となんでもいい、と言った。
精一杯、明るい声を出した。この子たちについていけるように、浮いてしまわないように。
遠くから、百瀬の気持ちの悪い声が聞こえた。なにか返事を求められている訳でもないから、私はその言葉を無視した。良くない、とは思う。けど、ここで百瀬が来てしまったら、きっと私は虐められる。少しくらい、虐めのない昼休みを過ごしたい。
色んな所から、優しい言葉が聞こえる。悲しいことや辛いことも沢山言われたけど、それでも。私は今、優しいことを言って貰えてる。幸せだった。
だけど、そんな幸せが続く訳が無い。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。