第14話

少しだけの幸福。
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2019/11/16 13:34
クラスメイト
ねぇねぇ、呉羽ちゃん、昼休み一緒に遊ぼ?
呉羽
呉羽
え、えっ?
ある日の昼食終わり。これまで全然話してこなかったクラスメイトが、いきなり私に話しかけてきた。しかも、一緒に遊ぼうって。
その子は、クラスの中でも権力が強く、いつも笑っていて楽しそうで、明るい人だった。私とは、まるで反対の人。そんな人にいきなり話しかけられて、思わず変な声を出してしまった。
クラスメイト
えー、私も!私も一緒に遊ぶ!
クラスメイト
いいねぇ!呉羽ちゃん、遊ぼ!
色んな人が、私に話しかけてくる。いきなり。
呉羽
呉羽
(なんで、一気にこんな・・・。)
疑問を抱えながらも、必死に笑顔を作って小さく頷いた。折角誘ってくれたのに、断ったらきっと嫌われる。いつも暗い奴を誘ってくれたのに、断ることなんて出来ない。
クラスメイト
じゃあ、何する?
クラスメイト
呉羽は、何したい?
呉羽
呉羽
え、あ、私は、なんでもいいよ。
私のことを、気遣ってくれた。それが本当に嬉しくて、涙が出そうになった。それを必死に堪えながら、みんなに合わせよう、となんでもいい、と言った。
クラスメイト
そっかー、じゃあ、いつも私たちがやってるのでもいいかな?
呉羽
呉羽
勿論だよ!
精一杯、明るい声を出した。この子たちについていけるように、浮いてしまわないように。
桃瀬
桃瀬
えっ、何、呉羽ちゃんも遊ぶの~?いーなぁ!
遠くから、百瀬の気持ちの悪い声が聞こえた。なにか返事を求められている訳でもないから、私はその言葉を無視した。良くない、とは思う。けど、ここで百瀬が来てしまったら、きっと私は虐められる。少しくらい、虐めのない昼休みを過ごしたい。
呉羽
呉羽
えっと、校庭・・・でいいんだよね?
クラスメイト
そう!一緒に行こうよ!
呉羽
呉羽
え、いいの?
クラスメイト
え、いいよ、勿論。もー、呉羽ちゃんったら、遠慮し過ぎ!もっと仲良くしよ!
色んな所から、優しい言葉が聞こえる。悲しいことや辛いことも沢山言われたけど、それでも。私は今、優しいことを言って貰えてる。幸せだった。
だけど、そんな幸せが続く訳が無い。

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