第8話

一人で見たテレビの中に。
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2020/02/21 04:59
とある休日の日、私は家に一人でいた。外出を勧められたけど、宿題が沢山あるから、と言って行かなかった。行きたくなかった、というのが本音だけど。本当は宿題なんて少なかった。だから、一人でテレビを見ていた。何も感じないまま、ニュースキャスターの読み上げるニュースをただただ聞いていた。内容は何一つとして入ってこなかったけど。
呉羽
呉羽
つまんな。
机に頬杖を付きながら、冷たい言葉を放つ。テレビに映る人たちには、私の声は聞こえないから、凄く言いやすい。
呉羽
呉羽
私も屑に成り果てたな。
失笑しながら呟いた。
その時、私の興味本能が擽られる事件が流れた。だけど、その話はCMの後になった。興味もない化粧品だったり調味料のCMが流れる中、一つだけ異色なものが流れてきた。
『○○!頑張れ!』
『応援してま~す!』
『絶対勝って欲しいですね!』
興奮した様子で、それぞれが応援の言葉を口にする。凄く滑稽で、思わず笑いが零れた。
呉羽
呉羽
人のためによくそんな応援できるよねぇ。憐れだなぁ。
酷いことを言っている、というのは分かっていた。けれど、壊れてしまった私の自律神経は、このCMを何故か面白いと思ってしまった。
それから、私は再び始まったニュースに気を取られて、そのCMの事なんか忘れてしまった。笑ったけれど、心の中ではどうでもいいと思っていた証だ。
けれどそのCMは、私の心に深い傷を付けた。世界には、身近には、人生や生きることを楽しんでいる人が沢山いる。誰かが死んでいることも、死にかけていることも知らないで、楽しんでる人がいる。それは悪いことじゃない。むしろとてもいいことだと思う。けれど私は、それが許せなかった。
もし、朱蘭ちゃんや舞、心花ちゃんが同じように何かを楽しんでいるのなら。そう考えると、怒りや悲しみで心が苦しくなった。
誰かが楽しむためには、それ相応の犠牲がいるのは分かる。だけど、その傷が少しでも小さく、出来ることなら無いような世界になればいい。
だからやっぱり、世界は一度滅ぶべきで、人はみんな死ぬべきなんだ。そうやって、はるか昔から曲がってしまった世界の理を、もう一度作り直せば。
呉羽
呉羽
なんて。馬鹿みたい。結局私も、自分のことばかり。
今の世界で楽しんでる人もいるのに、私が苦しいから、そんな理由でこんな考えをすることは、私も大分我儘だ。結局、私も同じ。人はみんな同じ。
その感覚が、酷く気持ち悪くて、吐き気がした。やっぱり私が一人死ぬほうがいいのだろう。

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