第16話

結論。
154
2019/11/24 07:05
私の人生は多分、幸せなんて語れずに終わるんだと思う。やっと掴んだと思った幸せは壊れて、私に幸せをくれる人も物もない。
結局人なんて、誤った情報でも目の前にある涙ひとつで信じ込んでしまう。そんなものだ。今まで人間が、私に幸せをくれたことなんてなかったのではなかろうか。
否、きっと幼い頃にはあっただろう。きっと屈託ない笑顔で笑っていたのだろう。
呉羽
呉羽
きっと今でも、どこかの誰かは、笑ってる。
上を向きながら、誰もいなくなった昼休みの教室で呟いた。私の声は、誰に聞かれることも無く天井に吸い込まれて行った。いつ誰が来るかも分からないこの場所では、泣けない。
不思議なことに、泣けば少し、心が軽くなった。
呉羽
呉羽
(だからこそ今、泣きたい。)
泣いてばかりの日々は、本当につまらない。つまらないけど、それ以外の感情表現を忘れてしまった。
呉羽
呉羽
私はどうしたらいいの。
誰も教えてはくれない。教えて欲しいとも思わない。
人はみんな、自分さえ良ければそれでいい、そんな心で生きている。この世界のどこかには、自分よりも誰か、という精神で生きている人もいるのかもしれない。けれど、その人が言う優しい行為も、結局は自己満足の上に成り立っているものに過ぎない。優しさが苦痛になる時だってある。
そう、結局はみんな自己満足の中に生きている。
呉羽
呉羽
(勿論、私も。)
だけれども、今の私にとって満足を覚えるものは何一つとしてない。したい、と思う欲求がない。ただ一つあるとすれば、泣きたい、という欲求だけ。
廊下側の席から立って、窓際へ移った。かと言って誰かの席に座ることも無く、開けられていた窓から外を見る。バレーをしたり、ドッヂボールをしたり、サッカーをしたり、と各々が楽しそうに声を上げている。
そんな世界とは切り離されたような教室。
呉羽
呉羽
この世界に私がいる意味は、なんだろう。
こんな、答えも出ない疑問を抱くことが多くなった。誰に聞いたって、答えなんて返ってこない。私の心にも何度も問いを重ねてきたけれども、その答えが見つかったことは一度もない。
呉羽
呉羽
今、このベランダから飛び降りたら。
きっとみんな、驚くだろう。それであいつらは後悔するだろうか。いいや、きっとしない。そんなもので人が変わるわけが無い。心の中に深く根付いた悪魔は、何があろうと完全に消えうることなんてないのだ、きっと。
呉羽
呉羽
私は、死ぬ勇気すらない。ただの弱い、弱い・・・。
そこから先の言葉は、紡ぐことが出来なかった。涙が出そうになったから、ぎゅっと唇を噛み締めて、喉で悲しみを押し潰した。喉が痛い。
呉羽
呉羽
はっ・・・。くくっ、ふっ、はははっ!!
何故だか笑いが止まらなかった。もう、どうでもいいと思った。死にたいとも思わない。生きたいとも思わない。
きっと私は、もうこれ以上人に嫌われたくない、と思いながら生きてきた。けれど、もうそんなものどうでもいいじゃないか。嫌われるのなら、嫌われていい。私は私だ。それだけは、誰にも変えられない。私の意志には、誰も介入できまい。
呉羽
呉羽
私は・・・自由なんだ。
歪な笑みを浮かべると、涙で滲んだ視界が更にぼやけて、一粒だけ、涙が零れ落ちた。

プリ小説オーディオドラマ