私の人生は多分、幸せなんて語れずに終わるんだと思う。やっと掴んだと思った幸せは壊れて、私に幸せをくれる人も物もない。
結局人なんて、誤った情報でも目の前にある涙ひとつで信じ込んでしまう。そんなものだ。今まで人間が、私に幸せをくれたことなんてなかったのではなかろうか。
否、きっと幼い頃にはあっただろう。きっと屈託ない笑顔で笑っていたのだろう。
上を向きながら、誰もいなくなった昼休みの教室で呟いた。私の声は、誰に聞かれることも無く天井に吸い込まれて行った。いつ誰が来るかも分からないこの場所では、泣けない。
不思議なことに、泣けば少し、心が軽くなった。
泣いてばかりの日々は、本当につまらない。つまらないけど、それ以外の感情表現を忘れてしまった。
誰も教えてはくれない。教えて欲しいとも思わない。
人はみんな、自分さえ良ければそれでいい、そんな心で生きている。この世界のどこかには、自分よりも誰か、という精神で生きている人もいるのかもしれない。けれど、その人が言う優しい行為も、結局は自己満足の上に成り立っているものに過ぎない。優しさが苦痛になる時だってある。
そう、結局はみんな自己満足の中に生きている。
だけれども、今の私にとって満足を覚えるものは何一つとしてない。したい、と思う欲求がない。ただ一つあるとすれば、泣きたい、という欲求だけ。
廊下側の席から立って、窓際へ移った。かと言って誰かの席に座ることも無く、開けられていた窓から外を見る。バレーをしたり、ドッヂボールをしたり、サッカーをしたり、と各々が楽しそうに声を上げている。
そんな世界とは切り離されたような教室。
こんな、答えも出ない疑問を抱くことが多くなった。誰に聞いたって、答えなんて返ってこない。私の心にも何度も問いを重ねてきたけれども、その答えが見つかったことは一度もない。
きっとみんな、驚くだろう。それであいつらは後悔するだろうか。いいや、きっとしない。そんなもので人が変わるわけが無い。心の中に深く根付いた悪魔は、何があろうと完全に消えうることなんてないのだ、きっと。
そこから先の言葉は、紡ぐことが出来なかった。涙が出そうになったから、ぎゅっと唇を噛み締めて、喉で悲しみを押し潰した。喉が痛い。
何故だか笑いが止まらなかった。もう、どうでもいいと思った。死にたいとも思わない。生きたいとも思わない。
きっと私は、もうこれ以上人に嫌われたくない、と思いながら生きてきた。けれど、もうそんなものどうでもいいじゃないか。嫌われるのなら、嫌われていい。私は私だ。それだけは、誰にも変えられない。私の意志には、誰も介入できまい。
歪な笑みを浮かべると、涙で滲んだ視界が更にぼやけて、一粒だけ、涙が零れ落ちた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。