私の家は、毎日のように喧嘩。私と、じゃなくて。お父さんとお母さん。毎日、どうでもいいようなことで喧嘩してる。くだらないでしょ?でもね、それが当たり前なの。物心着いた時には、喧嘩してた。よく離婚しないな、って思う。離婚されたら、私が悲しいけどね。
お母さん、一回目の前でお父さんに殴られた。その時は、流石に私腹が立った。
喧嘩のせいで、お母さんは髪が抜けるんだって。ストレスだって言ってた。だから、お母さんが私に辛く当たるのも仕方ない。だって、それだけお母さん我慢してるから。
それに確証はなかったから、そうあればいいな、という私の願望だった。お父さんが帰ってきたら、お母さんはまるで機械みたい。でも、私は知ってた。お母さん、凄く苦しんでる。だからたまに、お母さんが壊れる。だけど、怒ってる時のお父さんにはそんなの関係なくて。
水筒を持ってお母さんに近づくと、少し悲しそうな顔をしてた。
多分、お母さんは心配して言ってくれたんだ、ってあとから思った。でも、その時の私には、そうは思えなかった。
お母さんは私が居るのが迷惑なのかな、って思った。だから、外に"遊びに”って言いながら、私を家から出そうとしてるんだって思った。
琴音も?お母さんは、私に出て行って欲しいんだよね?そしたら、お気に入りの琴音も一緒に出さなくてもいいじゃない。
もしかしから、お母さんは外に行かない私を、本当に心配してくれたのかな。もしそうだったら、いいな。
それだけ言って、お母さんは私より先に降りて行った。今日のお母さんは、機嫌がいい。この間喧嘩していたのも、私から謝って終止符を打ったから、お母さんは優しかった。口調も、いつも通り。優しい時のお母さん。
机の上に置いていた水筒は冷たいけれど、私の心は、久しぶりに暖かくなった。毎日こうならいいのに。学校が、なければいいのに。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。