どうでもいい。大嫌いな人が沢山いてもううんざり。サッカーなんて興味無い。ルールも知らないし。日本代表とかでもないのに、見に来る価値あるの?正直に、そんな感想しか抱けなくてただ茫然と眼下に広がるピッチと割と人の多い客席を眺めていた。試合開始まで約一時間。お母さんとお父さんの会話を聞きながらその情報を得て、一体何をして過ごすんだと嘆息の息を漏らした。
否定否定否定否定。今目の前にある幸せそうな笑顔を全て否定したくなった。そんな己の心の醜さに愕然とする。でも仕方ないとも思う、私は楽しいことなんて、幸せなことなんて何も無いのに、目の前で当てつけのように幸せそうにされたら、腹が立つし、悔しいし、恨めしい。
生きることの何が楽しい?笑うことの何が楽しい?どうしてそんなに幸せそうなの?楽しそうなの?
悲しみは疑問になり、次から次へと溢れて零れる。掬いきれない疑問は直ぐに私の脳内を埋めつくして、断末魔のように叫びを上げ始める。苦痛だ、嫌だ、こんな風になるから、外は嫌いなのに。人は嫌いなのに。
どうしようも無い苦しみだけが、私の中で渦巻いていた。
この時の私は知らない。革命が起こる、一時間後を。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!