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第1話

大学4年の秋学期
16
2020/10/12 17:03
大学4年の秋、大学に入る前は卒業論文を書くことに勤しみ就職活動も終わり楽しく過ごしているそう思っていた。しかし実際は、日本だけでなく世界中で巻き起こった新型コロナウイルスの影響で就職活動は大幅に狂った。内定取り消し、採用見送り、世間は「就職氷河期より厳しい」と。その中で私は100社以上にエントリーしweb面接を行い2社内定をもらえた。しかしわたしの思っていた職業にはつけなかった。それもそのはず私の受けようと思っていた会社は採用を見送っていたからだ。面接で私は嘘をついた。「第一希望は御社です」この言葉を少なくとも20回以上言った。辛かった。第一希望は「生きたくない」本当に辛い。「大学生は楽だ」と世の中は言うが本当にそうだろうか。未だ対面授業がない中孤独になってはいないかと思う。おじさんは「機械が苦手だ。若い者はなんでもすぐできてさすがだ」と言うがそんなわけはない。機械が苦手はもちろん。むしろパソコンの世代ではなくスマートフォンの世代なので、パソコンは学生時代授業でしか使わないものである。その中で行われた人生はじめての面接は自宅でパソコンに向かって行った。パソコンという無機質なものに対して自分の意見を言う。これを三人称の目線で見るとどうだろうか?すごく馬鹿馬鹿しくないか。パソコンに向かって「御社が第一志望です」という。その熱は相手に伝わっているのだろうか。そんなことを考えながら面接を行った。その中ていただいた会社は東京にあり、地元の田舎から上京をすることになった私は周りに嘘をつきはじめた。「一人暮らしなんか怖くないよ!全然大丈夫なんでもできるタイプだから。寂しくなんかないよ」と私は家族や周りの人に言う。本当にそんなこと思っていたらダメな人ではないか?一人暮らしなんかしたことないしワクワクはあれど不安だしなんでもできるなんか人の協力があってこそなんでもできる。父や母のことなんか寂しいに決まってる。東京に出たなら親と会う回数はもう決まってるようなものだ。実家なら365日会えるが田舎に帰るとなると年2回父があと20年生きたとしてあと40回しか会えない。たったの40回だ。1ヶ月程度しか会えなくなるのに寂しくなんかないというと嘘になる。そう私は涙を浮かべながら笑顔で話した。

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