第15話

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2021/08/14 12:32
薬を手に入れてから数時間経った。
今後について考えていると、ギィ…と控え目にドアが開いた。
ノワール
ノワール
ッ…!ブラッド…!
ブラッド
ブラッド
…ノワール…、
ドアの隙間から顔を覗かせたブラッドはどこか悲しそうな顔をしていた。
ノワール
ノワール
…どうした?何かあったか。
ブラッド
ブラッド
…何も、無い。何かないと来ちゃダメか。
ノワール
ノワール
いいや?全然いい。
俺は薬をポケットに入れて立ち上がった。
ノワール
ノワール
ただ、珍しいって思っただけ。いつも何かしら用があって来てるからさ。
ブラッド
ブラッド
……(何か…嫌な予感がしたんだよな。でもいつもと変わらない…。気のせいだったのかな…。)
ブラッドは床を見つめて黙り込んでしまった。


あぁ…そういえば、あの時のこと、謝らねぇと…。
ノワール
ノワール
なぁブラッド…、
ブラッド
ブラッド
ん…?
ノワール
ノワール
この前は…悪かった…。
ブラッド
ブラッド
この前…?……ッ!//
思い出したのか、ブラッドは少しだけ頬を赤く染めた。
ブラッド
ブラッド
い、や……平気…。もうあんま気にしてねぇし…。
ノワール
ノワール
…そっか…なら良かった。
本当は気にしているんだろうが、ここはブラッドの優しさに甘えることにした。
ブラッド
ブラッド
ぁ…ノワール。
ブラッドがベッドの下に置いてあった手提げを渡してくる。

中を覗くと、彩りの良い食事が敷き詰められていた。
ノワール
ノワール
…?
ブラッド
ブラッド
飯…ちゃんと食べてる…?ぁ、いや!食べてんならいいんだけどッ…!
ノワール
ノワール
……作ってきてくれたんだ。
ブラッド
ブラッド
いや?別にッ…作ったんじゃなくて、ほら、ついでだ、ついで!///
ノワール
ノワール
ッ…ふ……そっか。ありがとう。ついででも嬉しいよ。ブラッド、今腹減ってる?一緒食おうぜ。
俺が机の上に弁当を置くと、ブラッドが小さく頷いた。







ノワール
ノワール
あ〜…美味かった。
ブラッド
ブラッド
えへへッ…良かった。
ブラッドが箱を袋に入れながらニコッと微笑む。
本当に…ブラッドといると自分が自分じゃないみたいに乱される…。

自分の心が分からなくなっていく。


俺はブラッドにどういう感情を抱いているんだろうか…。晴人に対しての感情とは違う、この感情は一体……。
その時、思考を遮る様にしてポケットの通信機が鳴った。
ブラッド
ブラッド
ビクッ!  な、なにッ…!?なんの音!?
ノワール
ノワール
…悪ぃ、通信機。
ポケットから取りだし、内容を確認する。
分かっていたことだったが、晴人に関することだった。
今すぐ殺せ、期限が迫っている。放棄すればどうなるか分かっているんだろうな。
そんな言葉が並べられていた。
ため息をつき、通信機をポケットにしまおうとした。
ブラッド
ブラッド
ッ…どういう、こと…?
内容が見えてしまったのか、ブラッドが唖然とした声を出した。
ノワール
ノワール
何が?
ブラッド
ブラッド
何がって…その通信機の内容だよ。
ノワール
ノワール
いつもの事だ。こうやって急かしてくるんだよ、上の奴らは。
嘘だけど。普段は急かしてなんて来ない。
ブラッド
ブラッド
そう、なんだ…。なぁ、任務を放棄したら…どうなるんだ?
ブラッドが声を小さく震わせて聞いてくる。

なんでお前が怯えてるんだか…。
ノワール
ノワール
死神にとって任務放棄は死刑の対象だ。…どんな理由があったとしてもな。
ブラッド
ブラッド
ッ…し、死刑ッ…!?
ノワール
ノワール
あぁ。
ブラッド
ブラッド
ッ…そ、の……ノワールは…大丈夫、なんだよな?ちゃんと、任務やるよな…?
ノワール
ノワール
……………。
ブラッド
ブラッド
ノワール…?
答えられなかった。
嘘をついて後から悲しませたくなかったから。
ブラッド
ブラッド
ねぇッ…嘘、だよね?死なないよね?
ッ…ねぇ、ノワールッ!
ノワール
ノワール
…さぁな。先のことなんか分からないよ。
ブラッド
ブラッド
任務…放棄する気、かよッ…!
ノワール
ノワール
…まだ放棄するなんて一言も言ってねぇだろ。
ブラッドがギュウッ…と服を掴んでくる。

ブラッドは今にも泣き出しそうな顔で必死に叫ぶ。
ブラッド
ブラッド
ねぇッ…やめてッ…、ノワールッ…!
ノワール
ノワール
…ブラッド…お前さ…、
俺はブラッドの腕を掴むと、壁に追い詰めた。
ノワール
ノワール
何も知らないくせに…俺を止める権利、ある?
ブラッド
ブラッド
ッ…!!!!
俺がそう言うと、酷く傷ついたような顔で固まってしまった。
ッ…何やってんだ、俺…。
ブラッドに八つ当たりしたって意味ねぇのにッ…。
ブラッド
ブラッド
ッ…ごめん…、でも…俺ッ…
ノワール
ノワール
……ブラッド。日が昇る。早く帰れ。
ブラッド
ブラッド
ッ…ノワール…、
俺はブラッドの背中を押し、
追い出す形でブラッドを家に返した。
ノワール
ノワール
ッ…くそッ…、
俺…最低だ…。

ブラッドを悲しませたいわけじゃなかった。

あんな顔をさせたかったわけじゃない。


俺はどうすればいい?

晴人を守りたい…、でも…ブラッドも悲しませたくないッ…。
こんな欲張りな願い、神様は叶えてくんねぇか…。





✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
翌日、昼。
俺は人間界にいた。
晴人に別れを告げるためだ。
合鍵を使い、晴人の家に入る。
晴人
晴人
〜♪〜〜♪
晴人はキッチンで料理を作っていた。部屋中に香ばしい匂いが広がっている。
ノワール
ノワール
…晴人。
晴人
晴人
へ…?…うわぁ!!琉華!?
ノワール
ノワール
ははッ…悪ぃ。合鍵使った。
晴人
晴人
そうだったんだ、びっくりしたぁ…。って言うか、タイミング悪いよ!もう少し早く来てたらご飯作ってあげたのにぃ…、
ノワール
ノワール
いーよ、気遣わなくて。
俺は晴人の隣に立ち、フライパンの中を覗き込む。
晴人
晴人
ねぇねぇ、琉華はもう料理してないの?
ノワール
ノワール
料理…?
晴人
晴人
うん。ほら、このハンバーグも前一緒に作ったじゃん?
ノワール
ノワール
………
……………





晴人
晴人
へ!?料理を教えて欲しい!?
琉華
琉華
なんだよ、その顔。別にいいだろ。
晴人
晴人
い、いやッ…いいんだけどね。急すぎて…どうしていきなり…?
琉華
琉華
母親に作ってやりたくて。
晴人
晴人
ッ…お母さんに…?
琉華
琉華
…なんで虐待されてんのに
そんなことするのかって?
晴人
晴人
ッ………
琉華
琉華
……1回でいいから、お前を産んで良かったって言ってもらいたいんだ。どんな小さなことでもいいから…。
晴人
晴人
ッ!俺は!琉華が産まれてきてくれて良かったって思ってるよ!
琉華
琉華
ッ…ふ…ありがとう。…協力、してくれるか?
晴人
晴人
もちろん!
じゃあ…まずハンバーグでも作ってみる?
琉華
琉華
あぁ。ありがとう。



………………


ノワール
ノワール
…あ、ぁ。思い出した。
晴人
晴人
ほんと?
ノワール
ノワール
あぁ。でも…今はもう料理はしてない。
晴人
晴人
そうなんだ。琉華、上手くなってたから勿体ないなぁ。結局、お母さんには振舞ったの?
…お母さん…?
あ、れ……俺の、お母さんって……




……………
「い、痛いッ…!お母さんッ…痛いよッ…!」

「ッ…うるさいッ!うるさいッ…!」

「ッごめ、なさいッ…もう、やめてっ…痛いッ…」

「黙れッ…黙れッ…黙れ!!!!」
……………


「母さんッ…どこ行くんだよッ……」

「うるさいわね。どこだっていいでしょ。琉華は、早く家に帰りなさい。」

「なんでッ?…俺の事、捨てるのかよ。」

「うるさいッ…黙ってて。」

「ッ…!!!! 母さん!前!」

「……え?」

「ッ…!!!」


…………………
…思い、出した。

確か…この後、俺は母さんを庇って車に跳ねられたんだ。
晴人
晴人
…琉華?大丈夫?
ノワール
ノワール
……あぁ。大丈夫。…なぁ、晴人。俺の母親って今どこにいる?
晴人
晴人
ッ……琉華の…お母さん…?
ノワール
ノワール
あぁ。教えて欲しい。
晴人
晴人
…………琉華のお母さんは…琉華が交通事故にあった数週間後に後を追うように亡くなったよ…。
ノワール
ノワール
ッ…は?
晴人
晴人
死因は分からない。
でも…自殺だって言われてる。
ノワール
ノワール
そう、か…。ありがとう。
俺はポケットから薬を取りだし、晴人に手渡した。
晴人
晴人
なぁに、これ?
ノワール
ノワール
俺が帰ったら飲んで欲しいんだ。
晴人
晴人
なんの、薬?
ノワール
ノワール
…怪しいものじゃない。俺さ、しばらくの間またここに来れないんだ。
晴人
晴人
え?
ノワール
ノワール
だからその間…晴人が寂しくないように。な?
晴人
晴人
何それ。琉華らしくない。
ノワール
ノワール
何だ、それ。いいから受け取ってくれよ。
晴人
晴人
ふ〜ん……まぁいっか。ありがとう。
晴人は薬を受け取ると、机の上に置いた。
晴人
晴人
それより!もう来れなくなっちゃうの?
ノワール
ノワール
あぁ。今後暫くは…。
晴人
晴人
そっか……また寂しくなるね…。
ノワール
ノワール
…そうだな。
でもまたいつか落ち着いたら会いに来るよ。
晴人
晴人
…ほんと?
ノワール
ノワール
あぁ。約束する。
晴人
晴人
絶対だからね?
ノワール
ノワール
あぁ。
晴人
晴人
…分かった!
じゃあ…ちゃんとご飯食べるんだよ?
ノワール
ノワール
分かってるよ。…じゃあな、晴人。
晴人
晴人
うん!またね!
………ごめん、もう二度と会えないんだ。


さよなら、晴人。俺の分まで幸せにな…。

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