第16話

16
596
2021/08/20 03:24
ブラッド視点。
ノワールと言い合いになったあの日から数日が経った。

ノワールが任務を放棄するのを止めなくちゃいけない。だから早く会いたいのに、こういう時に限って晴れの日が続いた。

夜中に何回か建物まで行ったが、ノワールが現れることは無かった。


そんなに俺と会いたくないかよッ…。
今日は雨が降っていた。昼の11時頃、久しぶりに食材を買いに外に出た。
ブラッド
ブラッド
ッ…!
店で見覚えのある黒髪を見かけ、思わず袖を掴んだ。
ブラッド
ブラッド
ノワールッ…!?
ノワール
ノワール
ッ…!? …ブラッ、ド……?
ノワールは驚いた様子でこちらを振り返り、俺の顔をじっと見つめた。

その右手にはビニール袋が握られていた。
ブラッド
ブラッド
ぁッ…え、とッ…
ノワール
ノワール
なぁブラッド。この後、暇?
何を話せばいいか分からずオドオドしていると、ノワールがそう聞いてきた。
ブラッド
ブラッド
ぇ?うん…暇だけど、
ノワール
ノワール
そ。じゃあさ………










ノワール
ノワール
うおッ…暗ッ…!
ブラッド
ブラッド
うるさい。いいんだよ。
暗いとこが好きなんだから。
俺の家に上がり込んだノワールはビニール袋を机の上に置いた。
あの後、ノワールは俺の家に行きたい、と言い出した。

ノワール
ノワール
キッチン、借りていいか?
ブラッド
ブラッド
キッチン?別にいいけどッ…
ノワール
ノワール
さんきゅ。
ノワールは再びビニール袋を手に持つと、
キッチンに行ってしまった。


しばらく椅子に座ってボーッとしていると、キッチンの方から美味しそうな匂いがしてきた。
ノワール
ノワール
おまたせ。
キッチンから出てきたノワールの手にはハンバーグが入った皿が乗せられていた。
ブラッド
ブラッド
ハンバーグ?
ノワール
ノワール
そ。ブラッドに。
ブラッド
ブラッド
俺に…?食べていいのか?
ノワール
ノワール
あぁ。お前のために、作ったからな。
でも料理なんて数年ぶりだから美味いか分かんねぇ。
ノワールは机に皿を置くと、対面の席に座った。
ブラッド
ブラッド
ありがとう。…いただきます。
モグッ…と1口口に入れた。

ッ…美味しいッ…。
ブラッド
ブラッド
美味しいッ…!ノワールって料理出来たんだな。
ノワール
ノワール
あぁ。そうらしいな。俺も最近知った。
ブラッド
ブラッド
……?
意味が分からなかったが、あえて追求せず、ハンバーグを食べ続けた。
ノワール
ノワール
………
ブラッド
ブラッド
ッ…じっと見られると食べづらいんだけどッ…
ノワール
ノワール
ははッ…、悪い悪い。
可愛らしく食べるなぁって思って。
ブラッド
ブラッド
なッ…!?///
可愛らしくってなんだよ!?

褒められてんの!?いや、絶対馬鹿にされてるッ…。
ブラッド
ブラッド
でも、なんでいきなり料理しようって思ったんだ?
ノワール
ノワール
せっかくできるんだったら1回くらい誰かに振る舞っておきたかったんだよ。
どこか含みのある言い方に不安を覚えた。
おきたかった…ってなに?もう出来なくなるってこと…?





ブラッド
ブラッド
ご馳走様でした。…美味しかった。ありがとう。
ノワール
ノワール
なら良かった。
少しの間沈黙が訪れ、会話を探していると、じっとこちらを見つめていたノワールが口を開いた。
ノワール
ノワール
ブラッド…、この前、悪かった。
ブラッド
ブラッド
ッ…!
この前…とは、任務を放棄するとかしないとかの話のことだろう。
ブラッド
ブラッド
……結局…どうすることになったんだ…、
ノワール
ノワール
………、
なんで、答えない…?
なんで、そんな悲しそうな顔するんだ…?
任務、ちゃんとやるよな…?大丈夫だよな…?
ブラッド
ブラッド
ノワールッ…?
ノワール
ノワール
……できない。
ブラッド
ブラッド
え?
ノワール
ノワール
今回の任務はもう無理だ。俺には、できない。
なに、言ってるんだ。お前はこの任務を終わらせなくちゃ…殺されてしまうんだろ…?
ブラッド
ブラッド
なん、でッ…
ノワール
ノワール
大切な人なんだ…、俺は、あいつを殺すことなんかできないッ…。
ブラッド
ブラッド
でもッ…!その人の魂を狩らないとお前が死ぬんだぞ!?
ノワール
ノワール
分かってる。そんなの覚悟の上だ。
……自分の命を捨ててでも守りたいんだよ。
ガタッと立ち上がり、そう叫ぶ俺に対し、ノワールは冷静だった。もう、俺が何を言ったところで動くつもりは無いのだろう。

そんなの、いやだッ…、ノワールがいなくなるなんてッ…!



引き止めろッ…、何とかしてでもッ…
ブラッド
ブラッド
ッ…じゃ、あ!俺の血液はどうするんだ!?俺はもうお前以外の血を吸うことは出来ないんだッ…、俺も一緒に死ねって言いたいのかよッ…!
ノワール
ノワール
そんなこと思ってないし、望んでない。俺の代わりなんていくらでもいるだろ。死神なんて意外とそこらにいるさ。不安なら俺が代わりを呼んでやる。
ブラッド
ブラッド
ッ…ふざ、けんなよッ…!自分勝手なんだよッ…!さっきからッ…ずっと、ずっとッ…!
声が震え、視界がぼやける。
ノワール
ノワール
ブラッドッ…、
ブラッド
ブラッド
なんでッ…なんでだよッ…、好き勝手やってッ…結局いなくなるのかよッ…!
ノワールが俺の手首を優しく握った。
ノワール
ノワール
ごめんッ…自分勝手なことは分かってる。
恨んでもいい。呪ってもいい。
だから…泣かないでくれッ…、
ポロッ…と涙が零れ、自分が泣いていることに気がつく。
恨んでいい?呪っていい?
そんなことしたら、お前が戻ってくるのかよッ…!

違うだろ…?

俺はそんなこと望んでないッ…、お前と、ノワールと一緒にいたいだけなんだッ…。



そう思うと、口から勝手に言葉が溢れ出てきた。
ブラッド
ブラッド
うッ…ぁ"っ…グスッ…なん、でッ…なんで、だよッ……ほんとにッ…自分勝手だよッ…、最低だよッ…!勝手にッ……勝手に好きにさせといてッ……俺の事、置いてくのかよッ…!
ノワール
ノワール
ッ…ぇ…、
大切な人…?なんだよ、それッ…、そんな人がいるならなんでッ…なんでッ……
ブラッド
ブラッド
なんでッ…あの日、キスなんかしたんだよッ…!












ノワール視点。
ブラッド
ブラッド
なんでッ…あの日、キスなんかしたんだよッ…!
ノワール
ノワール
ッ…!!
なんで…?



なんでだろうな。
晴人のことが好きなのはあくまで人間である「琉華」としての俺だ。


記憶を失い、死神である「ノワール」としての俺は……、


ノワール
ノワール
……そっか……、そうだったのか……



ははッ…、今更気づくとかッ……遅いよッ…、俺…。


プリ小説オーディオドラマ