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第5話

初恋
『きっと社会は厳しいことばかりでしょう』
この子はいったいいくつなのだろうか。癒しを娘に求める父親の心境はこんな感じなのか。
『それでも信彦くんは乗り越えると思います』
『なぜなら、私を助けたときあなたは最高にかっこよかったからです』
映画のカットさながらその時を思い出す。
『  ちゃんのことを悪く言うな』
自分の声色が真っ赤な怒りに染まっている。体が熱いのは季節のせいだけではない。僕の中にこんな感情があったのかと驚く。
『なんだよ。お前もこの頭がおかしい仲間か』
何人かが彼女を囲んでいた。
『うるさい』
そこからは何を言ったのか、何をしたのかはうまく引き出せない。ただ一生懸命に立ち向かったような気がする。
『信彦君。大丈夫?』
優しい手の感触が想起する。なんだか顔が熱い。殴られたからだろうか。鼓動が早い。喧嘩で気分が高ぶっているからだろうか。こんな風にあの時は考えていたのではないか。でも今ならわかる。つまらない理性を埋め込んだ大人の俺なら。
あれが初恋だったのだ。始まりだったのだと。
それは夏が梅雨の後ろから少し顔を出した時だった。そういえば、そんな季節だったと感傷に浸る。今夜もまた良い夢が見られそうだ。

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小林捺哉
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小林捺哉
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