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第4話

甘くない
「おい」
「はい」
いつかと同じように上司の声に反応する。
「最近、なんか頑張ってんな」
頑張っているな。認められたのか。言われ慣れていなくて反応に困る。
「え、あ、」
「どうした」
会話がまるで生まれたての赤ちゃんとその家族みたいだ。
「引き続き頼むぞ」
背中を軽くたたかれる。
「はい」
今までの相手に対しての受けごたえだった中身のない返事に初めて意志が宿った。
「この程度で頑張ってるなんて甘やかしじゃないの」
「部長、お疲れ様です」
突如、朗らかな表情だった上司の表情が殺される。
「お疲れ様です」
俺も席を立つ。
「まだまだ甘いね」
「すみません」
二人の声が重なる。重なったからと言って言葉の重みが変わるわけでもなくそこに意志はない。
「気にするな」
部長が立ち去った後、上司はそう言って立ち去った。しかし、能力がない俺のことをほめたばっかりに上司に被害が広がった。せめて迷惑はかけたくない。そうは思っても体はうまく動かない。自分の体の制御が効かない。沈む気持ちも太陽のように必ずまた昇ることが保証されればいいのに。

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小林捺哉
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小林捺哉
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