仕方の無い事だった。
だって、これはただの夏休みだもの。
どれだけ願っても、足掻いても、夏休みはおわるものだから。
ね、そうでしょ?
◆◆◆
「アズリエルさん、そろそろセクハラやめてください…神様に通報しますよ?」
「アズリエルさんは相変わらずですね……。」
天我だったら、なんていうだろう。
「急に大声で何言ってんだ!」とか?
いや、「何言ってんだよ。」って叫ばないパターンのツッコミ?
目を見開くか…いや、これくらいだったら多分半瞳で見つめてくるんだろうな。
じゃあ、声色は?イントネーションは?体の動きは?
…わかんないよ。そんなの。
◆◆◆
ただの遊びのつもりだったの。
天使のみんなは全員ノリが悪い。かと言って顔を真っ赤に染めることもなく、普通に軽蔑した目で叱ってくる。
だから私はずっと世界No.35286に、地球に、日本に固執して生きていた。
周りには変わってると言われるが、天界の身でありながら、くだらないYouTubeや2chの書き込みを見るのが好きだった。
天我を生き返らせたのは、ただ単に面白かったから。
その名前が、死に方が、生き様が、死ぬほど滑稽で面白かったから。
どこにでも居そうなただの童貞。でも、それでもそれが、天界にいた私にとってはかけがえのないものだったから。
だって、No.4545のあの世界は、死ぬほど面白いと思わない?
あんな、勘違いであんなことになった世界は、あの世界だけだったから。
でもあの世界に私一人で行くのは、面白くないと思った。
もし私の大好きな日本の人があの世界に行ったら、どんな反応をするだろうって思った。
それで私は…天我を生き返らせるという禁忌に及んだ。
私は正直にそれを、神様に話す。
だって、バレたのだから仕方がない。
『そんなことして許されると思っているのか!お前ら死んだ人を生き返らせたんだぞ!』
そんな怒号が私を襲う。
もう何もかもが面倒くさかった。
物置に閉じ込められる系?天使としての格下げ?どーでもいいのよ。
私にとって、この天界にいること自体がお仕置だもの。
『罰として、あの忌まわしい人間のいる世界で過ごしてもらう。』
あぁ、そういう?
『お前の場合初犯だしな、ガブリエル(※エメリー)と同じ罰だが…、体は天使のままにしといてやろう。そうだな、期間は……』
『……………………は?』
◆◆◆
あ、そういえば…………天界での時間と人間界の時間は差があって…………
まずい。まずいまずいまずい。
【会いたい会いたい会いたい会いたいVS今言ったら嫌われる引かれる私しか感動しないなんか癪に障る】
◆◆◆
◆◆◆
天我に会える天我に会える天我に会える〜〜っ!!!
自然と足取りが早くなった。幸せな気持ちで天我の来る家に待機、足音が聞こえてくる度心臓の音が早くなる。
いざ、いざ、いざ……!
ガチャッ
色々想像してたんだ、再開した時、どんな顔するかなって。
目が見開くかなとか、驚くだろうなとか、もっとも、それを考えてた時は「帰れるはずもないんだけど」なんて思っていたけれど。
今、こうして会えている。
今、なんて???
正座しないのか……?どういうこと?えと、顔は真顔で…なんか、驚いてないみたいで……!
正座?!怒ってる?!?!?!
とにかく言われたどおり正座する。
いやいやいやいや、なんで私正座させられてるわけ?!よくわからな……っ
膝枕してる──────?!?!?!
なんで?!?!なんでこの人真顔で膝にぽふってしたの?!?!
なっななななっっ
圧を感じるよお~~~~~!!!!!!
あれ、私……何に謝ってるんだっけ…………?
でも、なんか……
天我をこうして膝枕して……
天我が甘えてるって考えると…………
これ、も悪くない……♡♡♡
はッッ正気を失ってたわ私!!流石におかしいでしょ!!天我におっぱい見せるとか!!
天我が自分の頬をぶっ叩いたため目が覚めた……!
いやなんでぶっ叩いた?!?!
天我、顔赤い。
そっか、「しないのか?」だとか、妙にいつもやってるふうだったのは……
何それ、…………////
立位…………っっ?!?!
やっぱり、天我がいい。天我じゃなきゃやだ。
下ネタ言うのも、下ネタ言われるのも、天我がいい。
『神様、私。人間に恋をしたんです。』
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。
登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。