第8話

スイッチ''オン''ですわ
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2018/04/28 00:17
「…い…ンラ…センラ…!」
「っ…ん?」
自分の名前を呼ばれ、俺は目を覚ました。そして目を開けると、うらたさんが俺の上に覆いかぶさっていた。
「あれ俺、いつの間に寝てもうたんや…」
「何驚いてんだよ。俺の方が、起きたら風呂だし、てか湯船浸かってるし、後ろからセンラに抱きしめられてるし…と、とりあえず!お前運び出すの大変だったんだからな!」
「あ、ほんまや。ベッドの上おる……って、なんか足痛いんやけど!?」
朦朧としていた意識が、段々と覚醒していく。それと共に、なぜか足がとても痛くなってきた。
「あ、あんまり動くなよ。ひねってるから」
「はぁ!?いつひねったん!?」
心当たりなんてない。風呂前はピンピンで元気やったし。

するとうらたさんが、なぜか苦い笑いを浮かべながら言った。
「そのぉ…風呂場から背負って出すときに、誤ってバランスを崩してしまって…」
「えぇ!?」
「ほんとごめんっ!たぶん軽い捻挫とかだから──」
「うらたさん大丈夫なん!?」
「……ん?」
痛くない上半身を少し起こし、うらたさんを引き寄せる。するとうらたさんは驚いたのか、うぇっ!?はぁ!?なんて声をあげた。
「怪我は!?俺上から乗っかったりしてへん!?顔とか傷ついとらん!?」
「ちょ、おまっ…やめろって!!」
「うわっ!」
流石に嫌だったのか、うらたさんは俺の体をベッドに倒して、さっきと同じ体制に戻した。
「俺は大丈夫だって!…落ちたお前の上乗っかって助かったからさ」
「え、そうなん?」
「…うん」
「あ、そうなんか…」
「えっと、ごめ──」
「よかったぁ〜!」
「…え?」
「うらたさんが無事なら、俺はそれでいいですよ。いやぁ、俺が下敷きになってよかったですわ」
うらたさんが怪我せんといてよかったわ。もし骨折ってもうたら、俺の心臓が大パニックや。

そう考えると、俺の焦りや驚きは影も形もなくしていった。しかし、足の痛みが襲ってきた。
「いっ…!そや、ひねったんやった」
「えっ、痛むか!?」
「いや、大したことな──いった!!」
「やっぱダメじゃん…今日はもう帰──」
「まってくださいっ!」
「っ、!?」
ベッドから降りようとするうらたさんを、俺は腕を引いて制した。

そして、何かスイッチが入った。
「…おい、センラ──」
「シましょうよ、うらたさん…フフッ」
「っ!!」
俺は優しく小さな体を引き寄せ、優しく唇をつけた。

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