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第1話

夜の電話
3,359
2018/04/07 16:26
仕事が終わって、外はもう真っ暗。時計の針はもうてっぺん過ぎとるのに、俺のスマホは震えていた。

着信音はもちろんアノ曲。浦島坂田船メンバーの着メロは浦島坂田船の曲やけど、アノ人だけは別やねん。

デスク端に置いてあるスマホの画面には、アノ人のLINEのアイコンが表示されている。

もちろん、俺は通話のボタンを押した。
「はい、もしもし?」
決まった一文を口にする。しかし、その声は夜中だというのに、笑いを含んだものだった。
「こげな遅くに、どないしたんです?うらたさん」
『お前なんで笑ってんだよ』
「ええやないですか。だって…」
『ん?』
「好いとる人からの電話なんですよ?」
『……んにゃっ!?』
付き合ってからは、かれこれ一年が経とうとしている。俺はもう慣れたんやけど、うらたさんはそうでもないらしい。

まぁ、そない所が可愛くて好きなんやけどな。
「それで、おやすみのキスでもしに来てくれるんですか?」
『はぁ!?あ、違う違う。今回は明後日のこと伝えようと思ってかけたんだ』
「あぁ、ライブのリハですか」
『そうそう。…そんなあからさまに落ち込むなよ』
「あ、バレました?」
『当たり前だろ。だって──っぶね』
「ん?だって?」
その後数秒、愛しい声は途絶えた。そしてすぐ、なんでもないとはぐらかされた。
『それじゃあ、またな』
「え、ちょっと…切られてしもた」
画面一杯のうらたさんのアイコンは小さくなって、通話画面は消えてしまった。
「だって言うてはったけど…まぁええわ。はよ寝よ」
せめておやすみの一言は言って欲しかった、なんて考えながらも、俺は布団に入って目をつぶった。

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