第5話

大人気ないわ…
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2018/06/10 14:33
浦島坂田船リーダー、うらたぬき。比較的高音でも真っ直ぐ心に響いてくる歌声は、男女関係なく惹かれるものだ。冷静であり、ときに抜けたところを見せる、愛らしい性格。身長は低いが、存在感は人一倍。

俺はうらたぬきさんに〈憧れ〉を持ち、今やそれは〈愛〉に変わっていた。




「合計点の高い方が勝ちだかんな?」
「わかってますよ」
計5曲を歌い、互いにヘトヘトの状態。それでも、楽しくてしょうがないのか顔はずっと笑っていた。

全てを出し切った俺らは、それぞれの点数をメモ・集計し、今から点数の書かれた紙を見せ会おうとしていた。
「せーので出しますよ?」
「おう」
そして息を吸い、大声で──
「「せーのっ!」」
バンッ!と机の上に、それぞれの点数が示される。それを見て、少し驚いた。
うらたぬき、415点。
センラ、416点。
その差は1点。
「え、俺が勝ったん…?」
「うぎゃー!負けたー!!」
「よ、よっしゃー!勝ったー!」

(一瞬現実や思わんかったわ)
結果にワンテンポ遅く喜びながら、俺はソファーに倒れた。
「なんか今一気に疲れ出てきてもぅた」
「ほらセンラ。なんかしてやる。何でも言え」
「ん?なんでもしてくれはるんですか?なんで?」
別に誕生日やないし、記念日でもなんでもあらへん。俺が首を傾げていると、うらたさんはため息をついて恥ずかしそうに言った。
「センラが勝ったらなんでもしてやる、って言ったろ。お前すげー喜んで、やる!って言ってただろ」
「あ、そないなこと言うてはりましたわ………そうや!言ってはった!」
俺はハッと思い出し、大声を出して起き上がった。



(うらたさんになんでもできる…)



心の中でニヤケながら、俺はテーブルに置いてある飲み物に手をつけた。

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