いつの間に寝てしまったのだろう。俺はいつの間にか、夢の世界へと誘われて──とにかく、寝てしまっていた。
「…どこだ、ここ?」
知らない壁に知らない天井。誰かの家みたいだけど、クローゼットには自分の服が入っている。だが、ここは確かに俺の家ではない。
「引越し前の家…じゃないしなぁ」
見覚えは全くない。俺は腕を組み、部屋の中を見回した。そして、ベッドの横に置いてある目覚ましに目が止まった。
「この目覚ましって、アイツのじゃね?…まさか──やっぱり」
先ほど見たクローゼットに戻り、再び中身を確認する。すると、やっぱり俺のものではない服がかかっていた。
「でも、センラの家でもない──」
「うらたさーん」
「っ!?」
もやもやしながら考えていると、部屋の外から聞きなれたアイツの声が聞こえた。そしてその直後、アイツが部屋に入ってきた。
「はよ起きてください!今日は二人で一緒に出かける言うて──って、俺の目覚まし持ってどないしたんですか?」
「センラが、いる…」
「そりゃいますよ。なに言うとるんですか」
「え、でも…なんで?」
知らない部屋──家にセンラと二人。時計はまだ朝早く、俺は寝ていた。服も二人分あるし、目覚ましはセンラの。
状況把握できずに固まっていると、センラが思ってもみなかったことを口にした。
「なんで言われましても…一緒に住んではるやから仕方ないでしょ」
「……エ?」
今こいつ、「一緒に住んでる」って…。
ワンテンポ遅れて驚き、口からは変な声が出た。
「忘れてもうたんですか?昨日も普通におはよう言うてくれましたやん」
「昨日も?え、俺ら結構前から一緒に…?」
嬉しくないわけではない。てか、そんなわけない。すごく嬉しいし、今すぐ声上げてはしゃぎたいくらいだ。
「1ヶ月くらいですよ。…まさか、今になって嫌なって──」
「ンなわけあるかっっ!」
「え──うおっ!?」
センラが寂しそうな表情で言いかけた言葉をかき消すように──自分の気持ちを伝えるために、俺は大声を出して、センラに飛びついた。
「う、う、うらたさんっ!?」
「嫌じゃない!むしろ嬉しい!」
「え、ええぇ!?」
こんなこと自分でも言うなんて思わなかったけど、センラは俺の倍驚いているようだった。
「センラ…」
「は、はいっ…」
「…大好きだ」
「はいっ……はいっ!?」
この気持ちはずっと変わらない。減るどころか、増していってる気がする。
俺はセンラのもん。センラは俺のもん。
大きな腕に包まれながら、俺はセンラの名前を心で何度も呼んだ。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。