否定された事に腹が立ったのか、彼女は頬を膨らませる。
割と可愛らしい顔立ち。
僕よりも年下だろうか。
我ながら大人気無い_______大人では無いが、と思ったが彼女の目を覚まさせるにはこれくらいが丁度良い。
くだらない御伽噺に付き合わされているのに、何と親切な人間なんだろう。
昔、読んだ本では幽霊は壁やら人やらをすり抜けていた筈。
結局、面白くも無い本だったけど。
いきなり彼女が僕に突進して来た。
訪れるであろう衝撃にギュッと目を瞑る。
しかし、何時まで経っても恐れていた衝撃は訪れない。
只、身体が何か冷たい物で覆われている様な?
ゆっくりと目を開く。
彼女の半透明の身体が僕の身体に重なっている。
それだけでも衝撃的なのに、彼女は何食わぬ顔で僕の身体をすり抜けた。
目の前で起こった、信じ難い光景に失神しそうになる。
彼女は僕の隣に座った。
不自然に肩が震える。
彼女はそんな僕を見て、クスリと笑った。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。