注意:
・なんとなく書きたくなりました
・「10月無口な君を忘れる」という曲の歌詞小説です
・「Important」エンド1、2の真人とあなたの別れの部分です
・本編よりちょっと詳しめに書いてるつもりです
真人はそっぽを向いて黙ったままだ。
こうなってしまうことぐらい、自分にもわかっていたはずなのに。
高専にいる以上、呪霊か呪術師かどちらかを選ばなきゃいけない日がくるって、わかってたのに。
こうなってしまうぐらいなら、初めから何も要らなかったのに。
呪術師か呪霊、どっちにつくかまだ迷ってた時にもみんなゆっくり決めるといいよと優しく私に寄り添ってくれたのに。
なのに私は仲間の期待を裏切ったんだ。
10月になったら下水道を出るとみんなに言った時も、みんな優しく「あなたが決めたことなんだから、あなたがそれでいいならいいよ」と言ってくれた。
別れがこんなに辛いなら、優しさなんて知りたくなかった。
出て行こうとするあなたに真人は一言声をかけた。
あなたがいなくなると真人は周りを見回した。
からっぽな下水道。
たくさん積んであったあなたの本も今は跡形もなく消え去っている。
思えばあなたがあんな風に混乱してるのを見たのは初めてかも知れない。
あなたは一人でいつも溜め込むくせに、顔によく出やすいから何か悩んでいたらすぐにわかってしまう。
今のままじゃいられないと自分でもわかっていたはずだったのに、どうしても変えられなかった。
そう、何一つも。
気づいたら、涙が流れていた。
小さなリュックに収まるほどの荷物を背負ってあなたは走る。
これで、よかったのだ。
ちゃんと別れることができたのに、なぜこんなに胸が痛いのだろう。
いつも、どんな日も一緒にいた仲間なのに。
どうして、どうして人間として生きる選択をしてしまったのだろう。
夏油に取り込まれる真人を見ながら、あなたは思う。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!