第11話

Adagio (ゆるやかに)②
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2021/05/08 02:30





友達のキラキラが、一生懸命何かを読んでいた。

そばに行って、


「なぁ」


話しかける。


「ん〜?」


目は読んでるものから離れない。


「挿れても良くない事ってある?」


「ないよ、いつもぎちぎ」


うっかり言いかけて、真っ赤になって顔を上げた。


「やめろ、変なこと聞くの!」


ちぇっ。
聞きたかったのに。
でもそっか、キラキラは、いつもいいのか。
なんかやり方があるのかな。
あるなら教えて欲しー。

しゅんとした僕の様子に気付いたのか、優しい口調になって、


「誰かとやって、良くなかったの?」


心配そう。

嬉しい、もっと心配して。


「スキャンダルだめだよ?
俺たち大事な時期なんだから」


そっちか!

僕の心配じゃないんだ?


「それは大丈夫。
女の子と遊んだりはしてない」


メンバーとは遊んでるけどね。


「ただ、女の子と男とじゃ、やっぱり違うんじゃないかなって思って、単純な好奇心?」


「それは、聞く相手を間違ってない?
俺じゃわかんないよ。
他の人知らないもん。
他のメンバーに聞いてみれば?」


キラキラは、俺、今、これ読んでるから、って、しっしって、追い払うように手を振った。




僕だって、聞けるもんなら聞いてるよ。

でも、何て聞いたらいいか、わからない。

ねだってやらせてもらった挙げ句、想像してたより良くなかったんだけど、僕は大丈夫なのかな、あなたは僕に満足してるの? なんて聞ける?

入り口は確かに強い圧迫感があって、まるで太いゴムみたいなんだけど、中が、粘膜にくるまれる感覚じゃなくて。
どこにも突き当たらないし。
イケないわけじゃなかったけど、僕は口でしてもらう方が何倍も好きだ。
僕の中もあんななのかって思ったら、不安になる。





「やりたい病はおさまったん?」


優しく僕の頭を撫でながら、穏やかに聞いてきたから、彼の綺麗な顔を見る。

目が輝いてる。
僕への欲望が高まってる時の、何とも言えない男っぽい顔。
狩られる小動物みたいな気になって、期待にぞくぞくする。

確かにここんとこ忙しくて、1週間ぐらいご無沙汰だった。


「あの、あのさ」


「ん?」


頭を撫でる手が、頬に移り、唇や顎に来た。
親指で、ゆっくり撫でてくる。
この辺りで僕はもう、気持ち良くなって、熱が生まれ始める。


「あなたは、僕に満足してる?」


面白い事を聞いたように、眉が上がった。
僕の肌を撫でる手は耳から首に来た。
ぞくぞくする。


「おまえはどうなん?
不満なんか?」


「その聞き方はズルいです」


手が鎖骨から肩に来る。
たまらず、彼の広い胸に飛び込んだ。
当たるところどこでも構わずキスをする。
舐めて、吸って、歯を当てる。


「僕、女の子じゃないから」


「せやな。
けど男にしたら、かなり柔かいで?」


手が背中に回って、肩甲骨や背骨を確かめるように動く。
その先には……。


「僕の中、ゆるかったりしませんか?」


低く笑った。
いやらしいけどかっこいい声。
お尻をつかむ手、僕の穴を撫でる指。


「僕はゆるかったんか。
がっかりさせたんか」


「違う、そうじゃなくて。
女の子とは違うってわかった、っていうか」


「違わんて」


言いながらいい匂いのクリームを取った。
そのまま、僕の中に入ってくる。


「むしろキツキツで、傷付けないか心配になるで?」


えー、そうなんだ。
あれ。

もしかしてそれ、サイズの問題?


「綺麗や」


ふわりと押し倒されて、キスされる。
大好きなキス。
中の指の動きと、僕を探る舌の動きに、頭の中がぼうっとしてくる。


『ふたりで話し合って、ふたりにとって気持ちいいやり方を探っていけばいいんだよ、それもすごく楽しいよ?』


不意に頭の中で友人のキラキラの声がした。

そうだな、確かに楽しいな。

彼が僕の中に、ゆっくり入ってきた。




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