電車で会った男の子は無言で私の横を少し離れて歩いている
これも優しさなのだろう
やがて学校につくと
名前は?
と、聞かれた
ん、じゃあここで待ってて
あまり人のいない場所へ私を連れていき、彼は走ってクラス分けを見に行った
そういえば名前聞いてないな…後で聞こう
少しすると男の子は戻ってきた
何にもなかった?
心配してくれてる
そう答えると
よかった…
男の子はホッとしていた
優しい
クラス見てきたから行こう
大丈夫。俺と同じクラスだから
その表情は柔らかく、私はとても安心した
心配してくれて、クラスまで見てきてくれて…
どういたしまして///
何故か彼の顔は少し赤かった
クラスにつくと男の子は私の席を探してくれた
よかった、俺と隣だ…
まだ俺の名前言ってなかったね
国見英です
その名前は私の心にすぐにインプットされた
絶対に忘れることはないだろう
えっ…何にしよう
そんなことを考えていると
アキ!おはよー
アーちゃんおっはー!!
元気な女の子の声と、どこか大人っぽい男の子の声が聞こえた
なんてやり取りを聞いていると
急に話が私の方へとんできた
ビクッ
やっぱりダメだ。体が反応してしまう
なんか…
恥ずかしい
自分でも信じられない
9年ぶりの外、9年ぶりに会う他人。
なのにこんなに話せるなんて…
今日は入学式のみだった
帰りはアキと椛と蒼空と帰った
家につくとさっそくノートをとりだす
今日から日記をつけるときめていたから
4月7日
今日は高校の入学式でした
朝の電車で偶然会って助けてくれた男の子と同じクラスでした
9年ぶりに外に出たのに、もう3人の友達ができました
お父さん、お母さん。
うまくやっていけそうな気がします
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。