野菜は柔らかく、よく煮込む。
と言っても、国見くんを待たせたくないし、
出来るだけ早く手を動かす。
スープもお粥も仕上げた後、
もう一品作るため、あるものを溶かしておいた。
その溶かしている間に、国見くんの部屋に向かった。
ドアを開けて、気付いた。
目を塞ごうにも手は空いていない。
何故ならお盆にスープとお粥が乗っているから。
とにかく後ろを向いて目を閉じた。
ドアを閉めて外に出るなんて余裕は頭に無かった。
その頭は真っ白で、少し目眩がしたほど。
国見くんは、
着替えている最中だった。
国見くんの上半身を見てしまった、
いや、見て醜いとかではなく、
肌綺麗だし、白いし……意外とがっちりとしていた。
いつもは細く見えるのに…着痩せするのかな…
うわぁぁぁぁ、私は何を考えて…!!
とにかく頭をリセットすることだけを考えた。
それから何度か空咳した後、
『いただきます』と食べ始めた。
グッ、と親指を立てていたし、
いつもの国見くんだと安心して台所へ戻る。
二人分のラーメンが食卓に置いてあり、
もう湯気が出て、作っていてくれていたのだと分かった。
それから溶かしたものも見たのか、
きっとこれから何か作ると予想し、
時間を短縮してくれた。
本当に観察眼が凄いし優しい…!
それからラーメンを頂いて、
久しぶりのカップラーメンの味が体に染みた後。
レシピは先から決まっていたので、
淡々と進めていくのみ。
この調子で行けば30分あれば十分。
それから冷やせば、
いつでも国見くんに出せるだろう。
少しうきうきとしつつ、
キャラメルの匂いが広がる部屋で作業を進めた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!