第3話

~3~
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2019/12/02 05:35
うーん……どこだろうか。


孤爪さん、何処かで見たことある、多分。


髪型を忘れる筈が無い。


どこだろう、私がよく見かける場所だなんて。







……あ……!そうだ!
 天瀬 (You)
天瀬 (You)
孤爪さんっ、
ここは、思いきって聞いてみるしかないっ。


多分だけれども!!
孤爪 研磨
な、何?
 天瀬 (You)
天瀬 (You)
アップルパイ好きですよね!?
黒尾 鉄朗
!!
孤爪 研磨
な、何で知ってるの…?
やっぱり。
 天瀬 (You)
天瀬 (You)
私のバイト先によく来てるからで…
…違ってたらすみません…
孤爪 研磨
……あ、駅前の?
黒尾 鉄朗
えっ、君あそこで働いてんの!?
 天瀬 (You)
天瀬 (You)
はい!今日も持ってきました!
と、私の手で持っていたケーキ屋の袋を見せてみる。
孤爪 研磨
……✨
黒尾 鉄朗
(お、研磨が懐いた。)
お、おぉ…なんだか目がキラキラしてる…


孤爪さんは、いつも一週間~二週間に一回位の頻度で、


アップルパイを買ってくれる人。


いつもは髪を結んでるから、


少し気が付きにくかったなぁ…


でも、髪色は目立つから、思い出しやすい。


…失礼だけどね。
黒尾 鉄朗
あ、待った天瀬ちゃん。
 天瀬 (You)
天瀬 (You)
は、はい?
唐突な「ちゃん」付けに少し驚く。


そして、黒尾さんは何か気付いた様に。
黒尾 鉄朗
そっちの大きい荷物は俺が持つよ?
 天瀬 (You)
天瀬 (You)
えぇっ!いえいえ、ご案内して貰っているので、それ以上はほんとに!
なんとお優しい…


大きい荷物、確かに重い。


でも、そんな迷惑。


かけれるわけがない。
黒尾 鉄朗
いやいや、無理しないでって。
はい、ちょっと失礼するね。
と、ニッコリ笑って、


私の手からスルリと荷物を取る。
 天瀬 (You)
天瀬 (You)
えぇっ!いやいや、ホントに大丈夫…
孤爪 研磨
じゃないでしょ、手、赤い。
 天瀬 (You)
天瀬 (You)
え……?
手が赤いと指摘されて初めて気付いた。


確かに、跡がついていて少しヒリヒリする。
黒尾 鉄朗
はーい、あと少しだから、ね?
そう丸く言いくるめられて、


何だか子供扱いされた気分だった…(笑)
 天瀬 (You)
天瀬 (You)
ほんと…ご迷惑お掛けしてすみません…
黒尾 鉄朗
迷惑なんて思ってないよww
と、ケラケラ笑う黒尾さん。


そして、色んな路地を通って、


ある一軒家の前で、急に止まった。
黒尾 鉄朗
あぶねぇー、
通りすぎるとこだったわ。
孤爪 研磨
天瀬…さん?
 天瀬 (You)
天瀬 (You)
あっ!呼び捨てでも、名前でも!
孤爪 研磨
じゃあ、あなたって呼ぶよ。
 天瀬 (You)
天瀬 (You)
ぅえっ!?
まさか、本当に名前で、


しかも呼び捨てだなんて…びっくりした。
孤爪 研磨
あなた。ここ、家だよ。
これから住む家。
 天瀬 (You)
天瀬 (You)
えっ!豪邸じゃん…!
孤爪さんが少しの微笑んだ後、指を指した。


その家は、普通の家より大きめ。


庭も広く、何より綺麗。


高そうなのに…家賃はアパートより安い。


どれだけ優遇されてるんだ…


そんなに料理に困っているのか…?
孤爪 研磨
クロは?上がっていくの?
黒尾 鉄朗
ん~俺はここまでかな。
研磨も天瀬ちゃんに懐いたみたいだし。
孤爪 研磨
懐いてない。
黒尾 鉄朗
いいや、懐いてた。
孤爪 研磨
懐いてない。
黒尾 鉄朗
懐いてた。
少し不毛な会話が続いて、
黒尾 鉄朗
じゃぁな、また近い内に会えるから。
 天瀬 (You)
天瀬 (You)
…?…は、はいっ。荷物を持っていただいてありがとうございますっ!
黒尾 鉄朗
律儀だなぁ天瀬ちゃん。
今度は手料理振る舞ってね(笑)
最後までニコニコと、手を振ってくれた。


〝近い内にまた会える〟


という言葉は引っ掛かったけど、


そこまで気にすることでもないだろう。
 天瀬 (You)
天瀬 (You)
勿論です!
まだ、これから住人さんと会わなきゃならないけど、


孤爪さんも、話す限りは良い人だ。


大丈夫、きっと。

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