研磨くんの誕生日の少し前、
季節の変わり目で、気温の変化が激しい頃。
国見くんが、バレーの練習中に、倒れたらしい。
幸いすぐ隣に金田一くんが居て、
色々と助けてもらったらしい。
病院に行き、風邪だと分かった。
今は私が看病している。
『ピピピピッ』
静かな部屋に、体温計の音が響いた。
『38度6分』
返事をするのも辛いのか、頷く国見くん。
いや待ってね、凄い可愛いんだ。
失礼だけど、失礼なんだけどね…!?
冷えピタを張った後、部屋を出て、
まぁ真っ先にキッチンへ。
そこには、ソファーに寝転びながら、
スマホを見る白布くんが居た。
バレーの練習や、バイトが無かったりすると、
こんな感じに早く帰ってこれる。
今回は国見くんのことを案じて休み、
帰ってきてくれたのだろう。
白布くんの言葉を喜びつつ、
腕捲りをして、エプロンを付ける。
レシピは浮かんでいるから、
野菜室や冷蔵庫を空けながら、
何を入れるか決めていく。
作ってあげたいけど、
きっと国見くんのを作り終わったら時間が無くなってしまうという気持ちと、
料理係としてのプライドが戦った結果…
どうしても、
誰かを待たせるということは出来なかった。
と、白布くんが家を出た所で、
いよいよ作り始めよう。
煮込みは時間が大切。
少しでも喉が通るように…
スープと、お粥と…
ふと、国見くんの喜ぶ顔が浮かぶ。
いつも私の作るお菓子やご飯を食べて、
美味しいと、笑顔になる顔が。
私は、お粥とスープを送ったら、
もう一品作ろうと、決意した。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。