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第127話

それだけあれば。
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2021/05/06 11:35
ガチャ
日向 直樹
日向 直樹
今日も早いな、千咲
泉谷 千咲
泉谷 千咲
…!
泉谷 千咲
泉谷 千咲
直樹、おはよう
日向 直樹
日向 直樹
おはよ
制服に着替えたばかりでまだ頭に寝癖をつけた直樹が、部屋から出てきた。
泉谷 千咲
泉谷 千咲
今朝ご飯できたけど…食べる?
日向 直樹
日向 直樹
あー、食べようかな!
そう言われてすぐに、もう一人分の食器を用意した。
___
修学旅行から帰ってきて、1週間。
いつもと変わらない日常が、また私たちのところへ戻ってきた。
泉谷 千咲
泉谷 千咲
はい、どうぞー
朝食を直樹の目の前に出すと、直樹は微笑んで私を見る
日向 直樹
日向 直樹
サンキュ、
日向 直樹
日向 直樹
いただきます!
しばらくご飯を口に運んでいると
日向 直樹
日向 直樹
あ、やべ、あんまり時間ねぇな…
泉谷 千咲
泉谷 千咲
今日も生徒会…?
普段の登校にしては早すぎる時間。
日向 直樹
日向 直樹
あぁ、この間の資料まとめるのが終わってなくてさ
泉谷 千咲
泉谷 千咲
次期会長さんは大変だね笑
日向 直樹
日向 直樹
今はただの役員だから雑用押し付けられてるだけだよ笑
日向 直樹
日向 直樹
じゃあ、先出るから!
泉谷 千咲
泉谷 千咲
うん!行ってらっしゃい
日向 直樹
日向 直樹
行ってきます、また後でな
泉谷 千咲
泉谷 千咲
うん
夫婦のような会話をしてから家を出た直樹。
___
この生活にもだいぶ慣れてきた。
三人分のお弁当を作る機会も増えて、こうやって直樹だけ生徒会の仕事で先に家を出ることも分かってきた。
でも…唯一慣れないことがまだあって…
泉谷 千咲
泉谷 千咲
ガチャ
日向 北斗
日向 北斗
ふぁ〜…
泉谷 千咲
泉谷 千咲
…!
泉谷 千咲
泉谷 千咲
北斗、おはよ〜
日向 北斗
日向 北斗
ん、…はよ
眠そうな目を擦りながら部屋から出てきた北斗は
キッチンにいる私の元に迷いなく歩いてきて…
日向 北斗
日向 北斗
…千咲
泉谷 千咲
泉谷 千咲
…ん?
ギュ…
泉谷 千咲
泉谷 千咲
…っ、!///
制服にエプロンを付けた私を上から包み込むように優しく抱きしめる。
日向 北斗
日向 北斗
…ねみぃ〜…
起きたばかりの北斗の温もりが服越しにポカポカ伝わってくる。
北斗は当たり前のようにしてくれる愛情表現だけど
泉谷 千咲
泉谷 千咲
…///
私はまだ、やっぱり慣れないのだ。
あー付き合ったんだ。とまだ実感しているほどに。
泉谷 千咲
泉谷 千咲
じ、時間あんまりないよ…?笑//
日向 北斗
日向 北斗
おぅ…
日向 北斗
日向 北斗
日向 北斗
日向 北斗
…今日…一緒に行くか…?
ドクン。
いつも強気な北斗の、寝起きの優しい声に少し心臓が跳ねた。
泉谷 千咲
泉谷 千咲
う、ううん。
泉谷 千咲
泉谷 千咲
英語の課題、学校でやっておきたいから先に行くね。
日向 北斗
日向 北斗
そうか、
少し寂しそうに変わった声が、耳元で響く。
_____
___
__
小林 凛
小林 凛
え?慣れない…?
泉谷 千咲
泉谷 千咲
…うん、
その日の昼休み。
私はいつものように屋上で凛とお弁当を広げ、最近の心境についての相談を始めた。
小林 凛
小林 凛
付き合ってることが?
泉谷 千咲
泉谷 千咲
うん、…なんかまだ緊張が残ってるっていうかさー…
小林 凛
小林 凛
そんなの、いずれ慣れてくるものじゃない…?
泉谷 千咲
泉谷 千咲
でも、北斗の方はもう当たり前って感じだし…私ばっかりが毎回心臓バクバクさせて固くなっちゃってるのは…なんかさ…//
小林 凛
小林 凛
まぁ北斗くん自身あんな性格だし、もっともっと進展させたいってウズウズしてそうだもんねぇ〜笑
泉谷 千咲
泉谷 千咲
そうだよね〜…
泉谷 千咲
泉谷 千咲
めんどくさい女とか思われたりしてそうで…笑
小林 凛
小林 凛
(それは無いと思うけど)
小林 凛
小林 凛
じゃあ!いっその事、チサからなにかしてみれば?
泉谷 千咲
泉谷 千咲
…え…?
小林 凛
小林 凛
いっつも寄ってきてくれるのは北斗くんからなんでしょ?
今朝もハグしてくれたり、一緒に行くかと聞いてくれたのも北斗からだったしなぁ…
泉谷 千咲
泉谷 千咲
ま、まぁ…笑
小林 凛
小林 凛
お風呂上がりに接近してみたり…♡
泉谷 千咲
泉谷 千咲
ちょ、変な妄想してないでしょうねぇ!?///
小林 凛
小林 凛
北斗くんは喜ぶと思うけどなぁ♡
泉谷 千咲
泉谷 千咲
…っ///
…まぁ、凛の言うことは意外と間違ってなくて、
私から何か北斗に対して愛情表現をする機会は極めて少ない。
付き合って少し経って、もう飽きられてるとか面倒くさがられてるなんて御免だし…。
…ここはひとつ…
_____
その日の夜。
日向 北斗
日向 北斗
…ゴクゴク…
ガヤガヤ音を立てるテレビを見ながら、リビングのソファーで食後のコーヒーを嗜んでいる北斗に
泉谷 千咲
泉谷 千咲
…っ…
ゆっくりと私は近づいていった。
泉谷 千咲
泉谷 千咲
…ほ、北斗…!
日向 北斗
日向 北斗
…んー?
返事とは少し遅れて目線を私に向けた北斗は
日向 北斗
日向 北斗
…ブッ!?!?
飲んでいたコーヒーを見事に吹き出した。
日向 北斗
日向 北斗
ゴホゴホゴホ…!!
泉谷 千咲
泉谷 千咲
だ、大丈夫…?笑
日向 北斗
日向 北斗
お、おまっ…//
日向 北斗
日向 北斗
なんだその格好は…!!///
泉谷 千咲
泉谷 千咲
…いやっ…//
だって…凛があんなこと言うから…
お風呂上がりに彼氏が喜ぶ格好なんて…胸元開いたキャミと短パンしか思いつかないし…
泉谷 千咲
泉谷 千咲
男子ってこういうの好きでしょ…?
日向 北斗
日向 北斗
何言ってんだよお前…//
呆れ顔で、でも少し顔を赤く染めた北斗は
私を宥めるように同じソファーに座らせた。
ガチャ
日向 直樹
日向 直樹
その頃、何も知らない直樹が部屋から出てくると
日向 北斗
日向 北斗
…!
フワッ…
泉谷 千咲
泉谷 千咲
…っ!
素早く薄着の私に自分が着ていたパーカーを着せた。
日向 北斗
日向 北斗
直兄、
日向 直樹
日向 直樹
…ん?
日向 北斗
日向 北斗
ちょっとあっち行っててくんねーか
日向 直樹
日向 直樹
…え?あー…いいけど
何食わぬ顔でそう言う北斗に対して
直樹も何も聞かずにまた部屋に戻って行った。
泉谷 千咲
泉谷 千咲
…な、なんで直樹のこと追い返すの…?
パーカーまで着せてくるし
やっぱり私のこんな格好…おかしいって言いたいのかな。
日向 北斗
日向 北斗
…//
日向 北斗
日向 北斗
…んなもん…
日向 北斗
日向 北斗
…他の男に見せたくねぇからに決まってんだろ
泉谷 千咲
泉谷 千咲
…!//
日向 北斗
日向 北斗
つーかなんなんだよ、いきなりそんな格好して寄ってきて…
泉谷 千咲
泉谷 千咲
い、いや…それは…
泉谷 千咲
泉谷 千咲
…面倒くさがられてるかと思って…
日向 北斗
日向 北斗
…は…?
泉谷 千咲
泉谷 千咲
私…まだ慣れなくて…
日向 北斗
日向 北斗
……
日向 北斗
日向 北斗
…なにが…?
泉谷 千咲
泉谷 千咲
北斗と…イチャイチャっていうか…カップルっぽいことするのっ…//
日向 北斗
日向 北斗
…//
泉谷 千咲
泉谷 千咲
北斗はいつも自分からそういうことしてくれるから…私だけ慣れてないなんて、面倒くさがったりするんじゃないかって…思って…
日向 北斗
日向 北斗
それで、俺の事誘惑しようとしてたって?
泉谷 千咲
泉谷 千咲
ゆ、誘惑とかそういうのじゃないけど!!//
日向 北斗
日向 北斗
日向 北斗
日向 北斗
…はぁ〜…
泉谷 千咲
泉谷 千咲
…っ。
日向 北斗
日向 北斗
ほんと、何言ってんだよお前…笑
泉谷 千咲
泉谷 千咲
…?
日向 北斗
日向 北斗
俺だって慣れてるわけじゃねぇよ。
泉谷 千咲
泉谷 千咲
…えっ…?
日向 北斗
日向 北斗
毎回緊張だってしてるし、お前が嫌がってねぇかとか気にするし、これでも勇気出して愛情表現やってんの。
泉谷 千咲
泉谷 千咲
だ、だって!いつも北斗顔に出すのに、そんな緊張してるとか伝わってこなかったし…!!//
日向 北斗
日向 北斗
バレねぇように隠してんだよ笑//
泉谷 千咲
泉谷 千咲
なんで隠すのよ!!///
日向 北斗
日向 北斗
恥ずいからに決まってんだろ!///
言い合いをする度にお互いの顔はどんどん赤くなっていく。
泉谷 千咲
泉谷 千咲
…//
日向 北斗
日向 北斗
…//
日向 北斗
日向 北斗
…ったく、
コト…
持っていたコーヒーを机に置いて、私の方へ向き直す北斗。
日向 北斗
日向 北斗
貸してみ、手。
泉谷 千咲
泉谷 千咲
…手…?
差し出された北斗の掌に、そっと自分の手を重ねると
北斗はそれを自分の胸に持っていく。
泉谷 千咲
泉谷 千咲
…!
ドクン。ドクン。ドクン。
聞こえる…
分かる…
北斗もドキドキしてるんだって、伝わる。
泉谷 千咲
泉谷 千咲
ふふっ笑
日向 北斗
日向 北斗
…これで分かったか
泉谷 千咲
泉谷 千咲
…うん。
泉谷 千咲
泉谷 千咲
伝わった
日向 北斗
日向 北斗
まだ1週間しか経ってねぇんだし、んな焦んなくてもいずれ慣れてくよ。
泉谷 千咲
泉谷 千咲
…うん
今朝と同じ、優しい北斗の声。
ドクンドクンと同じように音を立てる自分の心臓。
…それでいいんだ。それだけあれば。
泉谷 千咲
泉谷 千咲
…北斗
日向 北斗
日向 北斗
…ん?
ギュ…
日向 北斗
日向 北斗
…!//
泉谷 千咲
泉谷 千咲
…今朝の…お返し…//
勇気出して伸ばしたその手は、自分でも少し熱を持っているのが分かる。
日向 北斗
日向 北斗
…///
日向 北斗
日向 北斗
…その格好で煽ってんじゃねぇよ…//(ボソッ)

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