__北斗side__
俺の不可解な「それ」は、思えば誕生日からだった_。
自分でも、一瞬何言ってんだ?ってなった。
千咲が言う一言一言が、よく分かんなくって、
頭に浮かんだら、もう考える間もなく口に出していた。
で、この一言。
言われた千咲の方は…
不意をつかれたように固まって、
びっくりして黙り込んで…
そして顔を赤らめた。
あぁ、
なんだそういうことか。
三人で暮らそうってなって結局はOKしたのも、
ただの誕生日にあんだけはしゃいでウキウキしてたのも、
全部…全部…
直兄が好きだから。ってことか
その時初めて、俺の中で何か分からない「それ」が、胸に突っかかった気がした。
俺はその後、自分でも「それ」をどうにかしたいと思うかのように
シャワーを浴びながら頭をガンガン振った_。
___
次の日の放課後、帰り道。
クラスの女子に呼び止められた。
間を置かずに答えた。
恋愛とか、彼女とか、興味ねぇし。
そう思って、ふとその子を見ると
雰囲気というか、同じポニテだから?
「ごめんね急に、」と言って去ってくその子を見ながら、
この告白がもし…千咲からだったら…
一瞬そんな考えが頭をよぎった。
疲れてんのか…?
頭を掻きながら回れ右すると、
パチッ
「あいつ」がいた。
俺の目にすぐに入ってきたのは、二人の手。
俺の胸にある「それ」がウズウズと胸の中を掻き乱す。
指摘された千咲はすぐに手を離す。
…その顔はやっぱり赤い。
まさか、千咲が告って付き合ったとか…
俺はその時、冷静さを失いつつあった。
直兄が近くにあるカフェを指差して、
俺はわけも分からず二人の後に続いて店に入った。
胸の奥の「それ」が
邪魔くさくて仕方ない_。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。