第4話

序章の困惑
251
2020/05/02 17:31
お父さんから唐突に海外転勤を告げられてから…一週間。
お父さんはせっせと必要な荷物をまとめて…
日本から遥か離れたブラジルへと旅立っていった_
そして私は今日、
小林 凛
小林 凛
チサ!今日、上條先生から資料まとめるの頼まれてさぁ〜…
泉谷 千咲
泉谷 千咲
あーまた…。
上條先生は凛のクラス、C組の担任で、
どうやら凛の人柄を気に入ってるらしく…
こうして凛が雑用を任されることはよくある事で、
去年から私もよく付き合わされていた。
…だけど、今日は…
泉谷 千咲
泉谷 千咲
ごめん!!今日はちょっと野暮用で…
小林 凛
小林 凛
え!いつも放課後あんなゆっくりなチサが…珍しいね。
泉谷 千咲
泉谷 千咲
ほんっとごめん…!!すぐ家帰んなきゃいけないの!!
小林 凛
小林 凛
いいよいいよ…!笑
小林 凛
小林 凛
もうすぐ上條先生来るはずだから、「こんな雑用生徒に頼まず自分でやってくださいぃ…!」って、残り全部押し付けて帰っちゃうからっ!
明るい顔をして、そしてちょっといたずらっ子に舌を出して微笑む凛。
上條先生の好みも分からなくはない。
そんな顔を見るとますます罪悪感が込み上げてくるっっ。
泉谷 千咲
泉谷 千咲
申し訳ない…っ!明日のお昼、ジュース奢るからっ…!
小林 凛
小林 凛
あ、やったぁ〜笑
小林 凛
小林 凛
じゃあまた明日ねっ
泉谷 千咲
泉谷 千咲
…うん、またね!
そんな優しさに溢れた親友を後に、私は廊下を駆け出した_。
そう、今日は…一刻も早く家に帰らなきゃいけないんだ…。
なぜなら、
泉谷 千咲
泉谷 千咲
(例の子が…シェアハウスする相手が…!!)
いつもゆっくり凛とお喋りして帰る道を、今日は少しだけワクワクしながら走る_
マンション前に着いた時、どこか見覚えのあるシルエットが見えた
泉谷 千咲
泉谷 千咲
…ん?
泉谷 千咲
泉谷 千咲
あれは…
少し息を切らせながらゆっくり近づいていく…
泉谷 千咲
泉谷 千咲
…っ!
泉谷 千咲
泉谷 千咲
え!な、直樹くん!?
日向 直樹
日向 直樹
…っ!おぉ、泉谷!
泉谷 千咲
泉谷 千咲
な、何してるの、?こんなところで…
確か直樹くんは学校から真逆の方面に住んでたはず…。
日向 直樹
日向 直樹
あーいや、ちょっと…もうすぐ俺、この辺に住み始めるかも知んねぇからさ、
泉谷 千咲
泉谷 千咲
えぇ!?そうなの!?
直樹くんが!?このマンションに来る…!?!?
神様。そんな幸運を私に与えてしまって良いのですか…!!
日向 直樹
日向 直樹
お前もこのマンション?
泉谷 千咲
泉谷 千咲
えぇあ、うん。そう。
日向 直樹
日向 直樹
そっか、じゃあご近所になるかもな。
泉谷 千咲
泉谷 千咲
そ、そ、そうだねっ!//
はぁぁ〜笑顔が眩しいです…直樹さん…♡
泉谷 千咲
泉谷 千咲
あ、そうだ、…ごめん私急いでるからっ…!
日向 直樹
日向 直樹
お、おう!また明日!
つい例の子のことは忘れて直樹くんとずっと話してたい気持ちもありつつ…
私は一目散にエレベーターに乗り込んだ_。
家に着くなりすぐに家の隅々まで掃除を始めた。
直樹くんと同じマンションなんて…これからもマンション近くで会えるのかな…?
近くで会ったからとか言って一緒に登校しちゃったりとかして…!!♡
なんて妄想しながら…
泉谷 千咲
泉谷 千咲
(よし、こんなもんでしょ…!)
私の部屋以外の場所は全て、誰に見られても大丈夫なくらいには片付いた。
泉谷 千咲
泉谷 千咲
(はぁぁ…なんか緊張してきた…。)
愛想悪い子じゃありませんように…。
大丈夫。私なら仲良くなれる…!
そう自分に唱えかけた時…
ピンポーン
泉谷 千咲
泉谷 千咲
…っ!
来た…!
玄関前で立ち止まって一呼吸…。
泉谷 千咲
泉谷 千咲
…スー…ハァ…
泉谷 千咲
泉谷 千咲
…笑顔…。
そう呟いて両手の人差し指でクイッと自分の口角を持ち上げる
ガチャ
泉谷 千咲
泉谷 千咲
こんにちは!はじめましてっ…
元気な顔で挨拶すると同時に目に飛び込んできたのは…
泉谷 千咲
泉谷 千咲
…え!?!?な、直樹くん!?!?
日向 直樹
日向 直樹
…えっ!泉谷!?
な、な、なんで家に直樹くんが…!?!?
日向 直樹
日向 直樹
え、こ、ここ…お前ん家…?
泉谷 千咲
泉谷 千咲
…そ、そうだけどっ…
アワアワしながら目線を逸らすと…
直樹くんの隣に立つ人の顔を見て、私の困惑はさらに大きくなった。
泉谷 千咲
泉谷 千咲
…あぁぁ!!!!
日向 北斗
日向 北斗
…あぁ!お前この前のっ!!
泉谷 千咲
泉谷 千咲
非常識男!!
日向 北斗
日向 北斗
おてんば女!!!
日向 直樹
日向 直樹
…え?お前ら知り合い?
3人で家の前で顔を合わせて目を丸くする
私はまだ知らなかった。
これがまだ…悲劇の序章だということに__

プリ小説オーディオドラマ