ジャー…ジャー…
俺が食器を洗う音だけが響く家。
さっきまであんなに騒がしかったのが嘘のよう…
……
スタスタ…
新たな音が聞こえた。
北斗の顔は曇っていた。
あぁ…
…大体の話の予想はつく。
俺は顔色変えずに、手を拭いてソファーに向かった。
_____
トスンッ
ようやく目の前の北斗が口を開いた。
…やっぱり、その話か…
突然のストレートな言葉。
北斗の目は、本気の目だった。
北斗は真っ直ぐ俺を見た。
正直、北斗の気持ちは分かっていた。
でも…俺が思い描く何倍も…北斗は本気だった。
…伝えたっ…?
付き合ったとかそんな様子っ…
ただ…本気なんじゃない。
…こいつは…
…北斗は…
俺よりずっと…進もうとしてる。
千咲を引き寄せようとっ…手に入れようとっ…
…俺は…
もうこの気持ちに狂いはない。
千咲が誰に向かってんのかは分かんねぇけど…
俺も進みたい…。
北斗は息を吐いた。
俺は北斗を見た。
北斗から向けられたのと同じような目で_。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。