き、キス…される…っ!?
私がぎゅっと目をつぶった瞬間…
我に返ったようにお互いに体を離し、
部屋の外にいる北斗に大声で呼びかけて、
駆け足で部屋から出ていった直樹。
まだ、心臓がバクバクだ…。
今の…本当に直樹が…私に…
キス…しようとした…?
…でもどうして…。
取り残された私はただその場で息を整えるしか出来なかった_。
一方私の部屋の外では、洗面所から出てきた北斗がキョロキョロしている。
ガチャ
直樹が私の部屋から出てくるのと同時に北斗に呼びかける。
洗面所の前で二人がすれ違うと、
曇った顔をした北斗は、そのままの足で私の部屋に向かった。
コンコン
ガチャ
部屋中に広がった物を見渡して北斗が言った。
まだ心臓がうるさくて、愛想笑いしか出てこない…。
まさか見られてた…!?
いや、ドアはちゃんと閉まってたし…。
北斗…なんでそんな悲しそうなっ…
さっきのことを問い詰められたような気がして…ヒヤッとした。
なんか、思い悩んでる…?
妬くって…
それってつまり…
咄嗟に自分の顔を触って熱さを確かめる。
…北斗が…
私の目の前で弱音を吐いている…。
しかも私に嫉妬なんてっ…
そんなの、どう返すのが正解なのか…分かんないよ…。
この間言われた北斗の一言が頭に浮かんだ。
『直兄より…好きにさせてみせるから。』
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!