第112話

いつも来てくれるから。
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2021/02/12 10:00
泉谷 千咲
泉谷 千咲
北斗っっ…!!!
私は溢れた涙を堪えながらゆっくり崖の下に降りていく
日向 北斗
日向 北斗
…はぁ…はぁ…っ…
泉谷 千咲
泉谷 千咲
北斗!!大丈夫!?!?
日向 北斗
日向 北斗
…だからっ…うるせぇって…笑
日向 北斗
日向 北斗
頭に響くだろっ…。
泉谷 千咲
泉谷 千咲
何言ってるの…あんたが助け呼ばないからっ…!!
北斗の手を握ると…
泉谷 千咲
泉谷 千咲
…っ!?
この夜に薄着で寒いはずなのに
尋常じゃないくらい熱かった。
泉谷 千咲
泉谷 千咲
…北斗…まさか…熱…!?
日向 北斗
日向 北斗
…ははっ…みてぇだな…笑
ぐったりした顔で無理やり笑ってみせる北斗は、息も荒く、今にも意識を無くしそうだった。
これは、思ったよりも酷い…高熱。
泉谷 千咲
泉谷 千咲
ど、どうしよう…誰かっ…
違う。
私が1人でここまで来たんだもん…。
助けを呼ぶんじゃなくてっ…
ガシッ
泉谷 千咲
泉谷 千咲
北斗、立てる…?
日向 北斗
日向 北斗
えっ…
泉谷 千咲
泉谷 千咲
私が肩持っててあげるからっ…とりあえず…崖の上まで上がるよっ…!
私が自分で…北斗を助けなきゃ…。
日向 北斗
日向 北斗
ちょ…おまっ…何言って…!
泉谷 千咲
泉谷 千咲
いいからっ…!
グッ…
自分の肩に回させたその腕をガッシリ掴んで
でこぼこの道を歩き出そうとすると
ズルッ
泉谷 千咲
泉谷 千咲
うわっ!
バタンッ!
担いだ北斗と一緒にその場で崩れ落ちた。
泉谷 千咲
泉谷 千咲
いったっ…
日向 北斗
日向 北斗
だ、だから言っただろっ…
日向 北斗
日向 北斗
…バカ…。
泉谷 千咲
泉谷 千咲
…でもっ…私が助けを呼びに行くより…直接連れていく方が早いしっ…
日向 北斗
日向 北斗
お前が…俺を担いで運ぶ方がっ…何倍も時間かかるんだ…よっ…
日向 北斗
日向 北斗
…はぁ…はぁ…
北斗の息遣いは更に荒くなる。
泉谷 千咲
泉谷 千咲
…っ。
どうしようっ…。
泉谷 千咲
泉谷 千咲
……。
泉谷 千咲
泉谷 千咲
…スゥ〜…
泉谷 千咲
泉谷 千咲
誰かぁぁ!!…助けて〜…!!!
私はどうしようもなく、無我夢中で叫んだ。
C組の宿まで、さほど遠くは無い。
きっと誰かに、この声がっ…!
泉谷 千咲
泉谷 千咲
誰かぁぁ!!!
泉谷 千咲
泉谷 千咲
助けっ…
スッ…
泉谷 千咲
泉谷 千咲
…っ!?
叫ぶ私の頬に…北斗の手が触れた。
泉谷 千咲
泉谷 千咲
…ほく…と…?
日向 北斗
日向 北斗
はぁ…はぁ…
息を切らして今にも倒れそうな北斗は
日向 北斗
日向 北斗
…なんで…
ゆっくり口を開いた。
泉谷 千咲
泉谷 千咲
…え?
日向 北斗
日向 北斗
…なんでっ…お前…
日向 北斗
日向 北斗
ここにっ…来たん…だよ…
泉谷 千咲
泉谷 千咲
…えっ…
なんでって…
泉谷 千咲
泉谷 千咲
そんなの…心配以外に何がっ…
泉谷 千咲
泉谷 千咲
…っ。
いや、そうじゃないんだ。
北斗が聞きたいのは、
なんで私がたった1人でここまで来たかってこと。
泉谷 千咲
泉谷 千咲
……。
考えれば…集団で探しに来たり、今みたいに他の人に助けを求めたり、
もっと効率のいい救助の仕方はあったと思う。
…でも…
泉谷 千咲
泉谷 千咲
…私はっ…
いてもたってもいられなくなったんだもん。
泉谷 千咲
泉谷 千咲
北斗が…いつも来てくれるから。
日向 北斗
日向 北斗
はぁ…はぁ…はぁ…
北斗は途絶えそうな意識のまま、私の言葉を聞いてくれる。
泉谷 千咲
泉谷 千咲
私が呼ばなくても…いつも北斗は来てくれて。
泉谷 千咲
泉谷 千咲
でも…私はそれに素直に応えられてなくて。
泉谷 千咲
泉谷 千咲
だからっ…
泉谷 千咲
泉谷 千咲
北斗が呼んでるって思う時ぐらい…
泉谷 千咲
泉谷 千咲
私が北斗のそばに行きたいって思った…から。
これは、どういう心理なんだろう。
「いつもの恩を返したい」とか
きっとそんな薄っぺらいものじゃない。
私は…北斗をどう思ってっ…。
日向 北斗
日向 北斗
…ち…さき…
泉谷 千咲
泉谷 千咲
…っ…ん…?
日向 北斗
日向 北斗
ありがと…なっ…
泉谷 千咲
泉谷 千咲
…っ!
パタン。
それだけ言い残すと、私の頬に触れていた北斗の手がそのまま落ちた。
泉谷 千咲
泉谷 千咲
…え…北斗…?
日向 北斗
日向 北斗
……
泉谷 千咲
泉谷 千咲
北斗!!北斗っ…!!
どんなに揺すっても…北斗は目を開けない。
泉谷 千咲
泉谷 千咲
起きて…!!北斗っ…!!!
泉谷 千咲
泉谷 千咲
…北斗っっ…!!!!

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