お店に入って、中で流れる優雅な音楽を聴きながら、また頭を抱える。
…心読まれた…!?
気づいたら表のマネキンが来ていた服と同じものを持った私の隣で、北斗が釘をさしている。
選びたいのか選びたくないのかどっちなのよ…。
私が持っているシャツとパンツは、確かに「合いそう」と思って手に取ったものだった…。
でも北斗は、チャラチャラしてるような服を着てることが多いけど、洗濯物の中には女ウケしそうなシンプルな服もあったり、
たまに部屋の隙間から見えるジャケットは、そこそこかしこまったパーティーなんかに堂々と着ていけそうなほど、キマっていたりする。
…周りが思ってるほど、センスがない人でもなさそう…。
す、鋭い…っ。そして的確すぎる…っ!
喋りながら、後をついてくる私に、気になった服をポンポン取っては渡してくる。
…っていうか…こんなに素直に自分の話する人だったっけ…。
大量の服を詰め込んだカゴを両手で支えたままフラフラしていると、
グイッ
いきなり北斗が、
私の手に自分の手を重ね、一緒にカゴを持つ体勢になった…。
み、身動きが取れない…!
きょ、距離が…!顔が近い…っ!//
…彼女…!?!?///
バッ…!
唐突な言葉にびっくりして、つい持っていたカゴを手放して、北斗の足元に落としてしまう…
た、確かにあの時は私も直樹くんがあっさりしすぎててびっくりしたけど…
私が直樹くんの彼女だとか…直樹くんが私の事を好きとか…有り得るわけない…。
でも、その時…私は…
そうであってほしい。と思うかのように…
…なぜか反論の口を開けなかった_。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。