カフェの中でコーヒーを飲もうとした北斗が、目の前にいる私と直樹を見ながら、叫んだ。
直樹は私に見せてくれた紙を、北斗の前に差し出す。
手紙の内容を見た北斗は、目を見開いてもう一度直樹を見た。
私はただその隣で話を聞くだけ…。
北斗は私の方を見る。
急に話を振られて、少し焦る…。
しかも、昨日で私の気持ちが北斗に完全にバレてしまった今、北斗はなにか言ってくるのだろうかと思うだけで…背筋が凍る…。
北斗は、ずっと何故か不服そうな顔を続ける…。
…告白…
咄嗟にさっきの北斗に告白した女の子の顔が頭に浮かんだ…。
プルルル…プルルル…
直樹が席を立って、携帯を片手に歩き出す。
北斗はなんの気もないような顔でコーヒーをすする。
…あ…
勢い余って私…余計なことを…。
でも、無性に腹が立った。
告白って…そんなあっさりしていいものじゃない。
そんなあっさり受け流していいものじゃない。
今まで私は…何度も何度も…この気持ちを伝えたいと思って…
でもいつだって直樹は遠くて…みんなの王子様で…
私には…手の届かない存在で…。
そういう苦しい思いに打ち勝ってまで、告白してくれたような相手に…
あんなに…あんなに…っ。
痛い。
胸が痛い。
ガタンッ
私はお店を飛び出した。
…全部、図星だった…。
痛い所をガンガン突かれた。
直樹との距離が近づけば近づくほど、
実は自分でも気づかないうちに、今までよりももっと好きになっていて…
でもそれと同じくらい…
もし告白して振られたらって恐怖も…募っていってた気がする…。
付き合わなくても、恋愛感情として好かれていなくても…
このままの距離でいられたら…それでいいとすら思えた時もあった。
見慣れた景色を駆け抜けながら、目の水滴が溢れそうなのをこらえて、家ではない、どこかへと走り出した_。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。