第30話

俺お前のこと好きだから。
200
2020/05/13 13:25
あれから、何時間か経った。
もうすぐ、日が暮れる。
ご飯も作ってない。
洗濯物も取り込んでない。
お腹も空いてきた。
周りは、馴染みのない公園。
…北斗に…酷いこと言ったな…
自分の気持ちを突きつけられた感覚で、直樹にも会いにくい。
あー…帰りたくない。
帰って二人にどんな顔すればいいか分からない。
これだけ時間が経っても、
まだ涙は溢れてくる。
泉谷 千咲
泉谷 千咲
…グスッ…
一人でベンチに座って、直樹とのことを考える。
私は、1年前からずっと…
直樹が大好きだった…。
自分が恋をしていると気づいた時
直樹に恋人がいないと知った時
同じクラスで少し近づけたと感じた時
不意に優しくしてくれた時
直樹の…隣にいたいと心から思った時
私は何度も…何度も告白を決意して…
でも…やっぱりそれから先の勇気はなくて…。
あの時のどれか、ちゃんと勇気を出していれば…
今、こんなに苦しくならなくて済んだのかな…。
泉谷 千咲
泉谷 千咲
…グスッ…グスッ
「…メソメソすんなよ。」
泉谷 千咲
泉谷 千咲
…っ…!
横から聞き覚えのある声。
私がふと声のする方を見ると、
日向 北斗
日向 北斗
…はぁ…はぁ…
北斗が息を切らして立っていた。
泉谷 千咲
泉谷 千咲
…ほく…とっ…
泉谷 千咲
泉谷 千咲
…グスッ…なんで…来たのよ
日向 北斗
日向 北斗
…お前が…こんな時間までほっつき歩いてるからだろ?
日向 北斗
日向 北斗
…ったく…直兄と二人で探してたんだよ。
泉谷 千咲
泉谷 千咲
…っ。
直樹が…探してくれた…。
こんな時まで嬉しいと思ってしまう。
泉谷 千咲
泉谷 千咲
…私っ…私っ…!
涙は止まることなく溢れてくる。
日向 北斗
日向 北斗
…いつまで泣いてんだよ。
北斗が座っている私に目線を合わせてそう言う。
泉谷 千咲
泉谷 千咲
なんでっ…あんたが来んのよっ…!
泉谷 千咲
泉谷 千咲
グスッ…直樹が今来たら…私っ…
泉谷 千咲
泉谷 千咲
ちゃんと告白出来たかもしれないのにっ…!
自分の思い、全部打ち明けられたかもしれない。
そう思った。
日向 北斗
日向 北斗
…ちっ…っ。
北斗の顔が急に曇ったと思ったその時…
グイッ…
…チュ
……
…気づいたら…北斗の顔があった。
……
泉谷 千咲
泉谷 千咲
…っ!?///
ドンッ…!!
泉谷 千咲
泉谷 千咲
ちょ、…!?
咄嗟に北斗の体を押し返す。
泉谷 千咲
泉谷 千咲
(…今…私っ…北斗に…!?)
日向 北斗
日向 北斗
なんであいつなんだよ!!!
泉谷 千咲
泉谷 千咲
…っ!?
日向 北斗
日向 北斗
…っ!…っ。…はぁ…悪ぃ
北斗は一言だけ叫んで、我に返ったようにギュッと拳を握って息を吐く。
何が起きたのか…全く分からなかった。
日向 北斗
日向 北斗
俺…多分、好きだ。
……
…え…
泉谷 千咲
泉谷 千咲
…え…?
好き…?
…好きって…
…それは…どういうっ…
日向 北斗
日向 北斗
お前のそういうのっ…見てっとムカつくんだよ…
泉谷 千咲
泉谷 千咲
…は…
日向 北斗
日向 北斗
直兄のこと好きって聞いた時…なんか分かんねぇけどすっげぇムカついたんだよ…!!
日向 北斗
日向 北斗
なのになんだよっ…「恋人のフリ」って…
泉谷 千咲
泉谷 千咲
……
日向 北斗
日向 北斗
超ムカつくっ…。
ムカつくって…
…なんで…
日向 北斗
日向 北斗
…だから…カッとなって…さっきは、悪かった。
泉谷 千咲
泉谷 千咲
……。
…なんで…そんなこと…
日向 北斗
日向 北斗
でも…俺お前のこと好きだから。
日向 北斗
日向 北斗
…だから…直樹直樹って言うな。
泉谷 千咲
泉谷 千咲
…っ
どうしよう…
北斗…本気でっ…
それから先のことは、よく覚えていない。
家に帰って…ご飯も食べずに寝たんだっけ…。
北斗とも、直樹とも、顔を合わさないまま_。

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