あれから、何時間か経った。
もうすぐ、日が暮れる。
ご飯も作ってない。
洗濯物も取り込んでない。
お腹も空いてきた。
周りは、馴染みのない公園。
…北斗に…酷いこと言ったな…
自分の気持ちを突きつけられた感覚で、直樹にも会いにくい。
あー…帰りたくない。
帰って二人にどんな顔すればいいか分からない。
これだけ時間が経っても、
まだ涙は溢れてくる。
一人でベンチに座って、直樹とのことを考える。
私は、1年前からずっと…
直樹が大好きだった…。
自分が恋をしていると気づいた時
直樹に恋人がいないと知った時
同じクラスで少し近づけたと感じた時
不意に優しくしてくれた時
直樹の…隣にいたいと心から思った時
私は何度も…何度も告白を決意して…
でも…やっぱりそれから先の勇気はなくて…。
あの時のどれか、ちゃんと勇気を出していれば…
今、こんなに苦しくならなくて済んだのかな…。
「…メソメソすんなよ。」
横から聞き覚えのある声。
私がふと声のする方を見ると、
北斗が息を切らして立っていた。
直樹が…探してくれた…。
こんな時まで嬉しいと思ってしまう。
涙は止まることなく溢れてくる。
北斗が座っている私に目線を合わせてそう言う。
自分の思い、全部打ち明けられたかもしれない。
そう思った。
北斗の顔が急に曇ったと思ったその時…
グイッ…
…チュ
……
…気づいたら…北斗の顔があった。
……
ドンッ…!!
咄嗟に北斗の体を押し返す。
北斗は一言だけ叫んで、我に返ったようにギュッと拳を握って息を吐く。
何が起きたのか…全く分からなかった。
……
…え…
好き…?
…好きって…
…それは…どういうっ…
ムカつくって…
…なんで…
…なんで…そんなこと…
どうしよう…
北斗…本気でっ…
それから先のことは、よく覚えていない。
家に帰って…ご飯も食べずに寝たんだっけ…。
北斗とも、直樹とも、顔を合わさないまま_。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!