第8話

1.5日
46
2019/08/31 12:46
その日の夜。



なぜかまた、思い出せもしない少女のことを考えていた。
榎山みずき
はあぁ〜〜・・・・・・っ
やっぱ分かんないなあ・・・・・・。


今日、何したんだっけ?
何の話をしたんだっけ?



「誰」と・・・・・・居たんだっけ?



何度考えても、その答えは出るはずもない。
それに、明日プールに行けば、きっと思い出すのだろうから今思い出す必要もないと言えばないんだろうけど・・・・・・。



でも・・・・・・・・・・・・。




自分の中で思考がまとまらなくて、困る。

あと、なんでこんなにも思い出したいのかっていうのも、分からなくて・・・・・・。



榎山みずき
はあぁ〜〜・・・・・・なんでだろ・・・・・・
兄ちゃん
みずき、どうした?
榎山みずき
ふぇっ!?
気づくと、兄ちゃんがすぐ横に立っていた。
兄ちゃんは苦笑しながら言う。
兄ちゃん
でっかいため息だな。
宿題で分からないとこでもあるのか?
榎山みずき
えっ、いや、そうじゃ、ない、けど・・・・・・
兄ちゃん
・・・・・・ほら
榎山みずき
え、これ・・・・・・
兄ちゃん
お前のだ。最近泳ぎの練習とか、色々
頑張ってるしな
それは、一本の棒付きアイスだった。
僕が昔から好きなメーカーの。
兄ちゃん
頑張りすぎないようにな
榎山みずき
うん・・・・・・ありがとう
兄ちゃん
それだけ言うと、兄ちゃんは部屋を出ていった。

一人になった僕はさっそくアイスを食べることにする。





・・・・・・。



もう、今日はいいかな。「誰か」のことは。
何度考えても何も思い出せないし。


きっと明日も会うんだろうし・・・・・・。






なんて、結局今日も同じ結果に行きついたところで、
榎山みずき
あ、
アイスを食べ終えてしまった。



何度目かのため息をつくと、不意に眠くなってきた。


疲れてるんだ、きっと・・・・・・。


そんなことを思いながら、ベッドに寝転んだ──。

























──ということが、最近よくある。
ベッドに入ったあとは覚えてないから、きっと寝てしまっているんだけど。



・・・・・・復唱するけど、なぜか、思い出せもしない少女のことを考えているんだ。


プールに来ると、一気に記憶がよみがえってくる。
だから別に思い出す必要はないんだけど。
家では、そのことを分かってないからなあ・・・・・・。
今思い出さないと、って思ってるんだろうなあ・・・・・・。



そんなことを考えていたから、真横のしゃがむ誰かに気づかなかった。



・・・・・・もしかして、これがこ──、
うみ
どーしたの?
榎山みずき
いぃっ!?・・・・・・いいい、いや、別に・・・・・・
うみ
んー・・・・・・?
ねえ、今日は泳がないの?
榎山みずき
いや・・・・・・泳ぐよ
うみ
そう
少女──うみ・・・・・・さん?はまっすぐに僕の顔を見つめてる。
気まずくって、すぐにその場に立ち上がった。
そして、プールに入る。



今日は、いつもより冷たく感じた。

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