第6話

story
928
2018/05/21 08:21
只今、


近所の"ファミリーマート"にて仕事中です。
前野さん
音ちゃんってさぁ、
週何回バイトはいってんの?
バイトの先輩である前野さんと

雑誌コーナーを整理整頓していると、

突然そんな質問をしてくる前野さんに

不思議に思いつつも、
江戸川 音 (えどがわ おと)
週5です
雑誌を並べながら言う。

するとやっぱり
前野さん
うわっ、働きすぎっしょ
思った通りの言葉がかえってくる。
前野さん
え、友達に引かれない?
冗談めかして聞いてくる前野さんだけど…


前野さんは家の事情知らないし…。

江戸川 音 (えどがわ おと)
まぁバイトしてること言ってないので
《知られたら一発で庶民狩りだし》
前野さん
たまにはさー
息抜きしないとぉ
江戸川 音 (えどがわ おと)
えっ、ちょっ…前野さん?
いきなり馴れ馴れしく肩を抱いてきた前野さんに少しだけ恐怖を感じて距離をとった。
前野さん
うわっ、反応かわいい
わけのわからないことを言って、

徐々に距離を縮めようとする前野さんに

どうしたらいいかと戸惑っていると、

窓の外から
"こっち""こっち"としてる人物が目に入った。
その人に吸い付いていくように外へと飛び出した。
江戸川 音 (えどがわ おと)
紺野さ~ん、助かりました!
紺野さん
音っち。
前野のことは
適当にスルーしときなって
この人は、紺野さん。

この人もバイト先の先輩なんだけど、

紺野さんは本当に優しい人で、

唯一、外で私の家の事情を知ってる人物。
前野さん
それより見て、アレ!
紺野さんが指さした方向を見てみると、

たくさんの人だかりができていた。


何台ものカメラや、照明スタッフも。


芸能人か、何かかな?
じーつと見ていると、

たくさんの人たちに囲まれて


笑顔で色んなポーズをとっていた


一人の女の子がこっちを見た。


あ、あの子どこかで見たことあるような…
紺野さん
生メグリン!!!
メグリン…?


どこかで…
紺野さん
顔、こんだけしかないよ!?
と、拳を突き出し興奮気味の紺野さんに

はぁ…。と、曖昧な相づちをうった。
紺野さん
え、何の撮影だろ?
映画かな、ドラマかな?
江戸川 音 (えどがわ おと)
あの子、人気あるんですか?
紺野さん
え、マジで言ってる?それ
驚き、目を大きく見開いている紺野さんに、

当たり前のように頷く私。
紺野さん
スマホのCMとか、見たことない?
ほら、10代がなりたい顔No.1とか。
んーほら、
TVでよくインスタのフォロワー数が多いとかいって紹介されてる!
江戸川 音 (えどがわ おと)
ふ~ん…
そういう芸能人だのTVだのに興味を持たない私がつまらないのか、
紺野さんはあきらか残念そうな顔をして見せた。
仕方ないよね。

だって、TVみてる暇なんてないくらい

働いてるし。

TV代がもったいないし。
紺野さん
つまんないの~
メグリンみたら音っちも元気出るかな、と思ったのに
江戸川 音 (えどがわ おと)
えっ…
紺野さん
だってなんか今日、
ずっと冴えない感じじゃん?
紺野さんの思わぬ言葉に、

私は顔を上げた。

てっきり、ただ生メグリンを

可愛い!って共感してほしくて

呼ばれたかと思ってたのに…。

こんな風に気遣ってくれるなんて…、

紺野さんは本当に良い人だなぁ、

とますます好きになってしまう。
紺野さん
またお母さんトラブル?
江戸川 音 (えどがわ おと)
あっ、いやいや
少し訳でも説明しようかと思っていると、

"お疲れ様でーす!"

という大きな声が聞こえてきた。

撮影が終わったのかな。
紺野さん
あ、おーい!!
すかさずメグリンに手をふる紺野さん。

すると、
気づいたメグリンが笑顔で手をふり返してくれた。
紺野さん
あ、あっ、わーっ!
音っちもほら美少女マイナスイオン浴びときな!
紺野さんの言葉に頷きながら、

メグリンに向かって軽く手をふり微笑みかける。
紺野さん
かわいい~!!
生メグリンに逢えて終始嬉しそうに

跳び跳ねる紺野さんに若干引きぎみの私。

顔、ひきつってないだろうか…。
前野さん
お、音ちゃん、
お客様の荷物どこだっけ?
後ろから聞こえてきた前野さんの声に、

ハッと後ろを振り返り、
江戸川 音 (えどがわ おと)
今行きます!!
紺野さんを置いて、

お店へと走った。

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