只今、
近所の"ファミリーマート"にて仕事中です。
バイトの先輩である前野さんと
雑誌コーナーを整理整頓していると、
突然そんな質問をしてくる前野さんに
不思議に思いつつも、
雑誌を並べながら言う。
するとやっぱり
思った通りの言葉がかえってくる。
冗談めかして聞いてくる前野さんだけど…
前野さんは家の事情知らないし…。
《知られたら一発で庶民狩りだし》
いきなり馴れ馴れしく肩を抱いてきた前野さんに少しだけ恐怖を感じて距離をとった。
わけのわからないことを言って、
徐々に距離を縮めようとする前野さんに
どうしたらいいかと戸惑っていると、
窓の外から
"こっち""こっち"としてる人物が目に入った。
その人に吸い付いていくように外へと飛び出した。
この人は、紺野さん。
この人もバイト先の先輩なんだけど、
紺野さんは本当に優しい人で、
唯一、外で私の家の事情を知ってる人物。
紺野さんが指さした方向を見てみると、
たくさんの人だかりができていた。
何台ものカメラや、照明スタッフも。
芸能人か、何かかな?
じーつと見ていると、
たくさんの人たちに囲まれて
笑顔で色んなポーズをとっていた
一人の女の子がこっちを見た。
あ、あの子どこかで見たことあるような…
メグリン…?
どこかで…
と、拳を突き出し興奮気味の紺野さんに
はぁ…。と、曖昧な相づちをうった。
驚き、目を大きく見開いている紺野さんに、
当たり前のように頷く私。
そういう芸能人だのTVだのに興味を持たない私がつまらないのか、
紺野さんはあきらか残念そうな顔をして見せた。
仕方ないよね。
だって、TVみてる暇なんてないくらい
働いてるし。
TV代がもったいないし。
紺野さんの思わぬ言葉に、
私は顔を上げた。
てっきり、ただ生メグリンを
可愛い!って共感してほしくて
呼ばれたかと思ってたのに…。
こんな風に気遣ってくれるなんて…、
紺野さんは本当に良い人だなぁ、
とますます好きになってしまう。
少し訳でも説明しようかと思っていると、
"お疲れ様でーす!"
という大きな声が聞こえてきた。
撮影が終わったのかな。
すかさずメグリンに手をふる紺野さん。
すると、
気づいたメグリンが笑顔で手をふり返してくれた。
紺野さんの言葉に頷きながら、
メグリンに向かって軽く手をふり微笑みかける。
生メグリンに逢えて終始嬉しそうに
跳び跳ねる紺野さんに若干引きぎみの私。
顔、ひきつってないだろうか…。
後ろから聞こえてきた前野さんの声に、
ハッと後ろを振り返り、
紺野さんを置いて、
お店へと走った。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!